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《ネタバレ》 極限の不自由の中で生まれる瑞々しい細部の数々。
文明の利器である、電灯が電車がパソコンが携帯電話がその他諸々が寂しく役目を終える。 その中で家族は分裂し、もがき苦しみながら、農村に辿り着く。 そこで図らずも繰り広げられる、始めての共同作業とも言える全員で一匹の豚を追うシーンは、滑稽でありながらも無邪気で微笑ましい。 家族が和解し、農夫との別れの後、ロングショットのブレないカメラが、始めて等間隔で父→兄→母→妹という調和のとれた順で収まる家族を捉え、それまでなかった音楽が鳴るシーンは美しい。 人を癒し生命をもたらす姿とは真逆な凶暴性を備えた、水の紛れもない一つの姿である川。そこで起こる出来事は、水の多面性に翻弄される家族の儚さと身体接触を介した絆の生起も映していた。 駅という概念を捨て、どこでも止まれる自由さ、そして機動性を備え逞しく滑走する蒸気機関車。 蒸気により疲れた人間を煤まみれにし、笑わせ癒す様は動物的な愛らしさ、身体性をもっている。その献身性は、愛玩動物である事を辞め本能を剥き出しにした犬との対比ともなる。 そしてトンネルを介した観客と家族の闇の共有や、列車の窓とスクリーンを介した家族と観客の視点の共有などの映画という構造を生かした見せ方も素晴らしい。 【ちゃじじ】さん [映画館(邦画)] 7点(2017-03-12 00:52:38)(良:1票)
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