| 作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 ジョージが天使に「自分など存在しなければよかった」と言ったら、別の世界を見せられる。この世界で友人や家族たちにとってジョージが見知らぬ他人になってしまったことに、彼は絶望する。これが「死ぬよりつらい」のは、当たり前だ。人々の記憶からはジョージが消え、ジョージの方にだけは家族・友人の記憶があるのだから。「ジョージが最初から存在しない」世界なら、彼の人生にともなう記憶も消えなければおかしい。天使はジョージの絶望的な願いを聞き入れたように見せかけ、実はそれよりももっと悲惨な状態に彼を置いた。自分が存在し、しかし他人にとって自分が存在しない世界、というのはあり得ない。これで元の世界を「ああ素晴らしき哉、人生!」と思うの当たり前だし、ジョージがちょっと頭が良ければその矛盾に気づいたはずである。この映画を見た人がこの矛盾に気づいているのか、いないのか、また気づいた上で賞賛しているのかどうなのか、僕には分からない。存在しない世界を見せて「生きろ」と言うのなら、「地獄よりマシだから生きろ」と説くある種の宗教と変わらない。あとには、8000ドルの紛失という何も変わらない現実が残るのである。結果的に寄付が集まり救われたことは、天使の見せた幻想と何の関係もない。そして天使と関わった部分を除けばこれまたさほど魅力のない、「正直ものは救われる」という偽善的なストーリーが残るだけ。この映画を名作と評価する理由を、何一つ見いだすことができない。
【佐吉】さん [DVD(字幕)] 3点(2008-11-16 19:08:32)
佐吉 さんの 最近のクチコミ・感想
|