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《ネタバレ》 オリジナルが持つ無常観は微塵もないけれど、『七人の侍』的な要素というか戦闘・チャンバラのシークエンスを前面に押し出したリメイクと言えるでしょう。この江戸版テルモピュライの戦いともとれるシチュエーションで、やはり重要となるのは決戦の地である落合宿の要塞化であることは戦術の基本であり、隘路に大軍を入り込ませて戦力を分散させるというのは合理的です。本作ではこの落合宿要塞化の描写に力を入れているけど、あんな短時間であそこまでの仕掛けを造るというのは、ちょっと嘘くさくなり過ぎの感もあります。まあそこはとかくやり過ぎるところが持ち味の三池崇史が監督ですからね、サービス精神が過剰になるのは必然でしょう。 とにかくこの映画は、稲垣吾郎のサイコパス殿様がおいしいところを全部持って行ってしまったと言えるでしょう。こんだけ狂っていれば排除されるのも当然と言えば当然、この殿様のキャラ付けこそがオリジナルになかった要素で、あまりに酷いので鬼頭半兵衛=市村正親が主君を守ろうとすること自体が悪事の片棒を担いでいるような微妙な感じになってしまいます。対する島田新左衛門=役所広司は相変わらずの飄々とした演技、とても大博打に打って出る凄腕武士には見えないんだよな。自分ははっきり言ってミスキャストだと思うんだが、2010年以降は彼が主役という日本映画が多すぎるとも思います。俳優にはそれぞれ演技パターンに応じた役柄があるもので、大物俳優の層が薄いというよりもぶっちゃけ役所の名前を出せば企画が通りやすいという風潮があるのかもしれない。彼の演技の最大の難点はとにかくセリフが一本調子でなおかつ聞き取りにくいというところで、映画館ではどうだったかは判りませんが普通にTVで視聴するとまったく聞き取れずヘッドホン着用が必須でした。まあ他の俳優たちのセリフも聞き取りにくかったのは共通で、これはやはり監督の責任でしょう。 けっこうエグい場面が多かったが、戦闘シーンでは意外と血しぶき描写が少なかった印象もあります。いちばん?だったのは伊勢谷友介の復活で、「こいつは化け物か…」と絶句してしまいました。まあこういうところが三池崇史らしいと言えますけどね。 地上波では絶対放送できない本作に、よくTV朝日が出資したもんだ。これもまだSMAPだった稲垣吾郎が出演するのであの事務所に対する忖度が働いたのか、はたまたプロデューサーに騙されたのか(笑)。
【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2024-09-03 23:35:28)
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