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《ネタバレ》 出来のいい映画とはとても言い難い。脱力的なオフビート感も、緻密な計算というよりは単に下手クソな間の悪さが怪我の功名を効しただけにしか見えない。間がズレてるだけの大根役者陣もまた同様だ。しかし、だ。それでも面白いんだから困ってしまう。主人公ナポレオン・ダイナマイトは、その名のとおりバカバカしく滑稽で、なによりも気持ち悪い。しかし気持ち悪いんだが、憎めない。彼が面白いのは、そんな風貌のくせに(?)いじけた劣等感も卑屈さもなければ、逆に変人が変人として生きる糧としがちな尊大な負けおしみ的自意識もまるで持たないということだ。変人としての自覚すら、彼にはない。はたから見れば変人でも、彼にとっては当たり前な自分を当たり前に生きているだけだからだ。だからポケットにつめこんだおいしいポテトフライをクラスメイトにねだられても強気でNOと言えるし、それにより派手な蹴りを食らっても、負け犬根性ではなく単純に痛さに凹んで、面と向かってfreaking idiot(バカタレ)と罵ったりもできる。学園の花形として我が物顔にふるまう体育会系やチアリーダーたちが、その実ナポレオンとそれほど大差ないサエない風貌なのが、彼らの人間的対当性を表しているようでなんともおかしい。自慢できる才能も見当たらないし女の子に声をかけてもフラれるナポレオンは決してハッピーではないけれど、だからといってアンハッピーだと嘆いたりもしない。そのニュートラルさがなんとも魅力的だ。生徒会長選挙に出馬した友だちペドロのための応援パフォーマンスでヘンチクリン(だけど超クール!)なダンスを披露したり、出会い系サイトでナイスバディな黒人美女をゲットした兄キップのハネムーンために荒馬を調教してプレゼントするナポレオンは、彼らの幸運をLUCKY~!(いいなぁ~!)と羨ましがりながらも、持ち前のニュートラルな心意気で無邪気に祝福する。そんな彼に訪れるラストシーンはとびきりチャーミングだ。いつでも一人遊び専用だったナポレオン御用達ボール。退屈なその遊具を二人でプレイする喜び!そんな幸福感を校庭のスプリンクラーがささやかな噴水できらきらと彩る。可愛らしいデビーとのハイタッチ。これまたささやかに響くその音は、けれど間違いなく一人ではなく二人で発した音なのだ。実にナポレオンにふさわしい、ささやかでいて奇跡のようなハッピーエンドだ。
【BOWWOW】さん [DVD(字幕)] 6点(2009-10-25 00:47:23)(良:1票)
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