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《ネタバレ》 父親役の岸部一徳を除けば、主人公タカシを含めた登場人物たちは無名の俳優ばかりである。根津甚八や石田えり余貴美子ら顔の売れた俳優は、現実世界と同様にブラウン管の中で陳腐な昼メロを演じるか、C.C.ガールズの青田典子のように夢に登場するだけ、というのが面白い。サエない小学生タカシの日常と、そこにシンクロしていく彼の父母それぞれの子ども時代。彼らは当たり前に父であり母であり子どもである。けれど父であり母であり子である彼らからその当たり前な時系列を取り除けば、そこに残るのは、アツオとジュンコとタカシという対等にサエない3人の子どもの姿だ。中島哲也監督は魔法もSFも用いずサラリとそれを見せてくれる。妹のイタズラ描きを誤魔化すためダイナミックに塗りたくっただけの風景画がコンクールに入選してしまうこと。欲しくもない賞状をもらうこと。それがちっともうれしくないこと。あるいは病弱で寝たきりのお母さんがヘビ女であること。お母さんの部屋につづく階段を昇るとき、だから少し足がすくむこと。だけど、雨に濡れ自分もヘビ女になったって構わないくらい、お母さんが大好きなこと。本当はお母さんに甘えたいこと。子どもたちそれぞれの悩みや人には決して言えない思い。彼らかつての子どもたちを現在のタカシの延長線上に置かず、そっと並列させるのがいい。タカシの目下の悩みは逆上がりができないこと。おっぱいの大きな女の人が好きなこと。ダメ人間になりたくないこと。人には言えないそんな思い。それは逆上がりができない自分が許せないトモコも、さらには何度叱られても校則違反の買い食いをやめないヤスノキヨミだってそうだ。悩みは尽きなくて、だれにも話せない自分だけの思いがあって。逆上がりができたら今度は跳び箱が「乗りこえなきゃいけない人生の障害」として立ちはだかって。世界の仕組みは謎だらけで。だけど河原に吹く風はとても気持ちよくて。そうこうしているうちに鉄棒でつくった手のひらのマメはいつのまにやら消えている。それが人生だ。ラスト、神様に願いごとをするタカシ。逆上がりの悩みはまた別の悩みに変わっている。トモコが好きで、そんなトモコも同じように悩みを抱えていて。でもトモコが悩みを一つだけでも乗りこえたら自分のことのようにうれしくて。だけどトモコのおっぱいは小さくて。やっぱり悩みは尽きなくて。人生、それでいいのだ。
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