白いリボン の BOWWOW さんのクチコミ・感想

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白いリボン の BOWWOW さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 白いリボン
製作国,オーストリア,,
上映時間144分
劇場公開日 2010-12-04
ジャンルドラマ,モノクロ映画,ミステリー,歴史もの
レビュー情報
撮影は全編カラーフィルムで行われたと聞くが、最終的にミヒャエル・ハネケがここに残すべきと判断した色は、子どもたちの腕に巻かれるリボンや村を覆う雪の白、それだけだったのかもしれない。色彩を失くしたモノクロームの村は、血の気がひいたように冷たく寒々しい。さらにハネケは音楽の一切を退け、この村に漂う長閑な静寂をくっきりとふちどることで、逆説的に、その裏に潜む不吉や不穏を強調する。息づまる異様なこの静けさが雄弁に物語るのは、それが何だか分からぬままそれでもひたひたと確実に迫り来る、得体の知れぬ虞だ。愛人であったと思しき中年女の老醜を忌々しげに罵る医師。そんな彼がふと思いついたように年頃となった自分の娘に年齢を訊ねる場面でこの父娘を包む静寂には、身の毛もよだつ禍々しさが息をひそめている。色彩を排し音楽を排しさらにハネケが試みる次なる仕掛けは、物語の核=真実をも排除することだ。ハネケ映画には珍しく語り手のモノローグをそこここにちりばめながらも、そこにつまびらかな説明が付与されることはなく、描かれる出来事もまた決してその核心を顕にしない。そうして恐怖の正体は最後まで明かされずじまいとなる。たとえば、牧師である父が語る「奇病で死んだという罪深い少年の説話」に頬を上気させ恥辱に苛まれる息子と、彼の腕に何らかの罰として巻かれる純潔の白いリボン。また等しくこの息子が、罰を受けるため自ら折檻用の鞭を用意し、重い足取りで再び戻るその部屋。あるいは件の医師が娘の耳にピアスホールを開ける真夜中の診察室。それらが何を意味するのか、想像するのは容易い。だが映画は終始、そこで確実に行使されているはずの暴力を密室に隠蔽する。かよわき子どもたちの悲鳴や呻きが洩れ聞こえては来ても、その姿は秘密の小部屋に閉じ込められたまま第三者の目にふれることはない。それは、まさしく虐待の構図だ。そうした村の日常の中で、小鳥や幼児そして知恵遅れの少年らより弱き者へと向けられる陰惨な暴力や、反逆として張り巡らせられた針金だけが、畏るべき事件と看做される、その痛烈な皮肉。原題における副題は「ドイツの子ども史」といった意味だろうか。だが非力な子どもも、いつしか歴史を動かす大人になる。ドイツの子ども史は大人史となり、それがやがてドイツ史となる。1913年の子どもたちが創り出した歴史を、おそらく私たちは厭というほど知っているのだ。
BOWWOWさん [映画館(字幕)] 7点(2010-12-22 23:49:13)(良:2票)
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投稿日付邦題コメント平均点
2019-02-25バーニング 劇場版10レビュー7.00点
2018-08-12リバーズ・エッジ8レビュー5.33点
2013-05-25青春神話10レビュー8.33点
2013-05-02エドワード・ヤンの恋愛時代10レビュー10.00点
2013-04-28恋恋風塵9レビュー7.00点
2013-03-09楽日10レビュー6.00点
2012-01-24海角七号/君想う、国境の南7レビュー5.23点
2011-04-02エターナル・サンシャイン9レビュー6.60点
2011-01-18ソーシャル・ネットワーク7レビュー6.54点
2011-01-02ファイト・クラブ9レビュー7.38点
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