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《ネタバレ》 戦時下における軍国主義的大人社会とその縮図として展開される子ども社会、そうした構図の見事さもさることながら、それ以上にすばらしいのは、少年期特有の幼くも常に真剣な彼らの感情やゆらぎをきちんとそこに写しとっていることだ。戦争のため都会から田舎へと疎開してきた少年の心もとない不安と、地元の少年たちが見せる他所者への軽蔑と畏怖いりまじる好奇心。少年社会における厳然たる階級と、ひそかに渦巻く野心。その中でもひときわ目をひくのは、ガキ大将武が主人公進二に見せる幼い恋にも似た複雑で入り組んだ感情だ。仲間内では高圧的にふるまう武が進二と二人きりの時にだけ見せる特別なやさしさ。自分自身わけのわからぬそんな感情にいらだつ武は、進二が上手だと褒めた零戦の絵を闇雲にぬりつぶし、時に無意味な乱暴さで進二を小突く。しかし反面、隣町で悪童たちに囲まれる進二のもとへと黒いマントをひるがえし駆けつける彼の疾走は、愛する者を守るため悪に立ちむかうヒーローのそれ、そのものでもある。秀逸なのはそれに続くシークエンスだ。追っ手から逃れ隠れた雪の納屋で子どもらしく小便する進二とその後ろ姿をただ見ている武のさりげなくも印象的なショットを経て、二人がその足で向かう写真館。再び湧き起こる厄介な感情に、武はやはりどうしようもなく進二を力でねじ伏せてしまう。そしてただただ涙をこぼすのだ。この一連の武の姿がたまらなく胸をしめつけるのは、それが彼の初恋の有り様にほかならないからだ。物語の終盤、クーデターにより失墜した武が頑なに進二を遠ざけるのは、ガキ大将として以上に幼い恋を前にした一人の男として、彼が敗北を喫した自分に厳しく課す、貫き守るべき最後の誇り、それがゆえだろう。トンネルのゆるやかなカーブにつれてゆっくりと彼方に閉じていく少年時代、やがてそれは写真館で撮った二人の写真へとつながる。身震いするほどにすばらしいラストシーンだ。飾られた写真の中の幼くも凛々しい二人。形にはなり得なかった、けれどもなにより確かなその思いの、なんと誇らしく美しいことだろう。たとえトンネルの向こうには二度と還れなくても、それはあの日の武のように誇らしげに胸をはり、確かにそこにあるのだ。輝かしくも傷だらけの少年時代の、そのかけがえのない勲章として。
【BOWWOW】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-09-16 21:04:43)(良:5票)
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