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《ネタバレ》 デ・パルマ映画の主人公たちは常に脛に疵持つアウトサイダーである。『BLOW OUT』のジャックもまたその例に洩れない。刑事時代の潜入捜査で、自分の判断ミスから同僚を失った過去は、映画の音響技師となってもなお彼に暗い陰をおとし続ける。そんな彼が愛すべき売春婦サリーと出会ったことにより英雄的行動に打って出るさまは、描かれる意味合いこそ全く違えど、どこか『タクシードライバー』のトラビスを想起させる。だが、トラビスが人格障害的不気味さを常にまといつつもある種のパンクなかっこよさを表現していたのに対し、ジャックはあまりに善良で、その善良さゆえに非力だ。かっこ悪くブザマですらある。そこがなんともデ・パルマらしい。落伍者を皮肉たっぷりに英雄に仕立てあげるのがマーティン・スコセッシなら、英雄になり損ねた落伍者の背中を痛みをもって描くのがブライアン・デ・パルマなのだ。場違いなほど美しい花火と、それにかぶさる場違いなほど美しいピノ・ドナジオの音楽。そして映画をしめくくる悪趣味なラストのジャックの選択。それらすべてが再び負け犬へと逆戻りする彼の屈折と悲哀、そして痛みをきわだたせていて圧巻だ。そんな映画なのだから、非難されて当然といえば当然だ。事実本国アメリカでの公開時、かなりの酷評をうけたと聞く。しかし、雪の公園のベンチに茫然と座り続ける彼の背中にどうしようもなく涙してしまうような人間もまた少なからずいるのだ、と信じたい。負け犬のかなしみと悪趣味な感傷、それこそが、ブライアン・デ・パルマがせつないほどにくりかえしくりかえし描きつづける主題なのだから。蛇足ながら、原題のBLOW OUTは、タイヤがパンクする、ヒューズが飛ぶ、明かりを吹き消すなどのほか、名詞としては大敗を意味する言葉でもあるらしい。とりあえずミッドナイトクロスと改題したヘラルド映画の担当者出てこい!と言いたい。
【BOWWOW】さん [DVD(字幕)] 9点(2009-07-21 19:12:00)(良:1票)
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