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《ネタバレ》 お父さんとお母さんどっちが好き?と人に訊かれたら、私は迷うことなくお母さん!と答える子どもだった。父は毎日仕事で忙しく、顔を合わす機会も母と比べると極端に少なかったからだ。おまけにあの頃の父は、照れくささからなのか父親としての威厳を保つためなのか、わが子と親密なコミュニケーションをとるのが途轍もなく下手くそな人だった。そんな父の書斎の本棚にこの映画のパンフレットが大切に収められているのを見たのは、たしか小学生の頃だ。それ以来何度かテレビ放映を観逃しているうちに、私はいつしかお涙頂戴映画には拒絶反応を示すような生意気な十代になった。つまりこの映画は私にとって観る価値のないものとなったのだ。それ以来レンタルビデオ屋に行っても何百回と当たり前に素通りしてきた本作のDVDを、先日なぜか仕事場で貰うという奇妙な機会に恵まれた。そして観た。やはりお涙頂戴映画だった。私は泣いた。ダスティン・ホフマンにでもメリル・ストリープにでも可愛い金髪の子役にでもなく、この映画のパンフレットを東京の映画館から後生大事に持ち帰っただろう若き日の父に、泣いた。父は今も健在だ。だが父に似て親密なコミュニケーションをとるのが途轍もなく下手くそな人間に育った私は、このことを当の父には話せずにいる。父と子の関係なんて、たぶんそんなもんだ。だけどどれだけ照れくさくでもそれでも、そこにはちゃんと愛がある。お父さんとお母さんどっちが好き?と人に訊かれたあの頃、少しくらいは迷っておけばよかったなと、大人になった私はなんだかバカみたいだけれどそんなことを思った。
【BOWWOW】さん [DVD(字幕)] 7点(2010-07-22 17:23:29)(良:3票)
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