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冒頭のパブでの、主人公のマークとガールフレンドのエリカさまとの対話からしてすごい。ふたりとも間髪置かずにものすごい早口でしゃべりまくりつづけ、これを執拗なカメラのきりかえしでみせるのだけれども、このふたりの対話と、バックに流れている(おそらくは店内のBGM)テクノ調の音楽とが、だんだんにシンクロしてくる。というか、さいしょっからシンクロしているのかもしれないけれど、観ていてだんだんに気がついてくるわけだ。この、それなりに尺のある長い対話の終盤なんか、まるでふたりでラップやっているみたいで、観ていてもちょっとした高揚感を味わってしまう。わたしなどは字幕を読むのに神経を集中してしまったので(とにかく早口だから字幕の情報量もはんぱではない)、純粋に音と映像だけを楽しむことができなかったのが残念。このシーンはまた、何をしゃべっているのかとか気にしないで観てみたい。こういう演出のシーンはこの作品のなかでもう一ヶ所、マークの協力者になったショーンがクラブのなかで話をするシーンでくり返され、もういちど楽しむことができる。すばらしい! おそらくは音楽に合わせてセリフのタイミングを演出しているわけだろうけれど、とにかく堪能した。これに、撮影を「セブン」や「ゲーム」でもフィンチャー監督を助けたジェフ・クローネンウェスが担当していて、また被写界深度の浅い撮影でワンカットのなかでひんぱんにピント位置を移動させたりもしているわけで、このあたりの演出力には感服させられる(カメラの被写界深度の浅さには、ちょっと疑問もあるけれども)。 マークをめぐるふたつの訴訟を軸に、過去にさかのぼりながらも時系列にそった展開になるけれど、あいだに審判シーンをうまくはさむことで、スピード感にあふれる展開になっている。ストーリー的には、若くして富豪になったけれど、その原点には「得られない愛」があって、それをラスト(現在)まで引きづっているのだよ、というわけで、これは現代版「市民ケーン」なのだね、という感じである。ラストに主人公がノートパソコンを開くときにBeatles の「Baby, You're a Richman」の印象的なイントロが流れてきて、「ああ、やはりこの曲で来たか」とは思うベタな選曲なんだけれども、このイントロが流れてくるしゅんかんにはゾワッとしてしまった。ベタだけれども、あまりにはまりすぎであった。
【keiji】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-01-30 11:09:10)
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