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《ネタバレ》 90年代にVHSのレンタルで見たのが初見だが、その時点で印象に残ったのは近代科学への警鐘でもなく愛する人の幸せを願いながらの悲しい自己犠牲ということでもなく、ゴジラ襲来後に収容された重傷者や母親を呼んで泣く子ども、立ち働く白衣の天使と女学生の歌声だった。これは先の大戦に直接関わる慟哭の思いと鎮魂の祈りの表現としか思われず、この映画だけは他のゴジラ映画と異質だというのが率直な感想だった。
また今の目で見直すと、放射線量の測定機器を子どもに直接向ける光景が、5年前の現実の事故のことを思い出させて非常に痛々しい。放射能を帯びた怪獣との設定はその後も一応引き継がれていたわけだが、これが虚構のキャラクターの単なる一属性というだけでなく、いつの時代にも再現されうる現実の脅威を表現したものであったことを改めて思い知らされる。 そのほか単なる怪獣映画として見た場合にも、特撮映像は昔の映画ながら文句をいう気にならない迫力があり、巨大な生物に対して地べたを這う人間の恐怖感が表現されている。この映画では魚・牛・豚(と娘っ子)を食うことになっていたが、こういう肉食の習性はその後に引き継がれなかった設定と思われる。また出演者では何といっても河内桃子さんが可憐で可愛らしい(やたらに触るな、と宝田明氏に言いたい)。巡視船PM20こうず、PM21しきねの撮影協力もご苦労様でした。 [2024/5/25追記] 「-1.0」を見た機会に再見。上の本文には2011年の原発事故関連のことが書いてあるが、今回は2024年の米アカデミー賞映画「オッペンハイマー」との関連を思わされた。大量破壊兵器の開発に科学者が手を貸していいのか、というのはまさにその映画のモデルの人物を思わせるテーマだが、この映画では科学者本人が人間の弱さを自覚して、最後の良心を死守した形になっている。そのような厳しい姿勢を科学者には求めたいということだろうが、しかし公開70年後の現代では、それがいわば古風な律義さ、あるいは昭和的な素朴さにも感じられるのが皮肉なことだった。昔は真面目でちゃんとした人が多かったらしい。 また前回見た時と同じく河内桃子さんにやたらに触るなと宝田明氏に言いたくなったが、言いたくなった理由は特に、触った手の親指で河内桃子さんの肌を撫でるからだった。大事に思う表現だとしても気色悪いのでやめてもらいたい。 【かっぱ堰】さん [DVD(邦画)] 8点(2016-07-30 21:40:53)(良:1票)
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