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《ネタバレ》 戦後4年目の映画だが、すでに多くの人々が普通に市民生活をして夜の銀座も栄えている。ただし戦災孤児や生活苦の話も一応あり、そもそも家族構成にも戦争の影響が見えていたかも知れない。カンカン娘というのがどういう意味か説明はなかったが、当時多かったパンパンガールに対する感情を表現したらしい場面はあり、台詞でも「カンカン」「パンパン」の対比がなされていた。
内容としては歌謡映画ということで、ノリのいい題名の歌を聞かせるほかにミュージカル風の場面もあり、正規の合唱曲が出る場面もあったりして各種の歌が入っている。歌以外では著名な落語の師匠が出演して、終幕部分を落語で締めたのは意味がよくわからなかったが、これは現代歌謡+伝統芸能(+映画も?)のコラボレーションによる総合娯楽映画だったのかと結果的に思った。 コメディなので笑わせる場面が多く、大男が日本家屋に入ると物が落ちたり倒れたりする趣向がやたらしつこいので笑った。また女児の言動がユーモラスで「たびたびすみませんねえ」は大笑いした。ポチが「腐ったような犬」というのもひどい言い草だが、映画に出るくらいなので賢い犬と思われる。このポチも雰囲気を和ませる重要キャラクターだった。 物語の面では、主人公が「流し」の経験により芸術に対する考え方を変えていて、これは映画会社が違うが2年後の「カルメン故郷に帰る」(1951)に通じるものがある気もする。また主人公の相手の男が、喧嘩でわざとやられていたのは戦後らしい非暴力の訴えのようでもあるが、ただし一度は強いところも見せていたので、守るべきものを守るために躊躇はないということらしい。 全体的には、これから希望の未来があるとまではいえなくても、前向きにやっていればそれなりに道が開ける、と思わせるような朗らかさのある映画だった。 その他に関して、主人公宅の周辺は畑や林や野道があって一体どこなのかと思う。少し歩けば町らしくなるので東京の周縁部だろうが、これは制作会社の撮影所付近と考えるのが普通のようで、世田谷区の小田急沿線だと思われているらしい。丘の上から家並みが見えて電車の走る場所は、梅ヶ丘駅近くの羽根木公園(当時の通称・根津山)と推定されているようだった。 またどうでもいいことだが、2階と屋外で歌を交わす場面で出ていた「サンタルチア」の替え歌で「何たることぞ、さらば往かん」という歌詞があったのは、後世のオヤジギャグ「なんたるちあサンタルチア」に先駆けた発想かと思った。 【かっぱ堰】さん [インターネット(邦画)] 6点(2025-01-04 16:07:08)(良:1票) 《新規》
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