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《ネタバレ》 タランティーノの誠実なところは勧善懲悪を徹底しているところだ。『遊星からの物体X』や『エクソシスト』へオマージュを捧げ、相変わらずのムダ話と清々しくなるような残虐描写で観客の心を掴んで離さない。配役の妙も評価したい。ティム・ロスとカート・ラッセルの起用はそれ自体に意味がある。意味するところは『レザボア・ドッグス』と『遊星からの物体X』と本作に共通する点が多いということだ。密室サスペンス。誰も信用出来ない。敵の姿が見えない。『物体X』の音楽を担当したエンリオ・モリコーネはマカロニ・ウエスタンとの橋渡しも果たしている。ただ単に俳優としての脂質のみでキャスティングしないところがタランティーノの映画らしくて好感が持てる。
で、物語はどうかというと、正直言って『デス・プルーフ in グラインドハウス』以降の作品中最も満足度が低かった。サミュエル・L・ジャクソンは底抜けにカッコ良い。過去最高のサミュエル・L・ジャクソンだと思う。しかし、ミニーの家にいた連中がいまいち活躍しないのが不満だった。せっかくいいキャラクターをしていたティム・ロスが活躍したのは序盤だけ。マイケル・マドセンは最初に脚本を渡された3人の俳優のうちの1人なのに影が薄かった。8人の重要人物のうち、輝いていたのはマーキス・ウォーレン(サミュエル・L・ジャクソン)、デイジー・ドメルグ(ジェニファー・ジェイソン・リー)、クリス・マニックス(ウォルトン・ゴギンズ)、ジョン・ルース(カート・ラッセル)の4人だけ。つまり、馬車に乗っていた4人だけだ。マーキス・ウォーレンが敵対する勢力に限ればドメルグだけ。ジェニファー・ジェイソン・リーの『エクソシスト』演技がギラギラとした輝きを放つ一方で、その他は影に隠れてしまった。『レザボア・ドッグス』とは異なり、彼らは敵のはず。もっと活躍の場が与えられても……これはない物ねだりだ。ただでさえ上演時間は3時間近い。彼らにも活躍の場が与えられるような事になれば、4時間を超える映画になっていただろう。私の結論は、8人は多すぎたということだ。タランティーノの8作目の映画という事実が『H8teful Eight』というタイトルロゴのポスターが製作されるほどゴリ押しされた結果なのか?タランティーノは10本映画を作ったら引退するとほのめかしている。そのことへの強い意識が8人の悪人を生み出したのなら、思い上がりではないかと思う。『8 1/2』みたいにタイトルどまりにすればよかったのだ。 不満はあるが、面白いことに変わりはない。もう1回くらいスクリーンで観たいと思えるほど魅力的な映画だ。ただ、『ジャンゴ』や『イングロリアス・バスターズ』のように手放しで絶賛できる映画ではなかった。 【カニばさみ】さん [映画館(字幕)] 7点(2016-03-04 23:44:27)
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