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《ネタバレ》 魅力的な人が沢山出てきます。
同じくらい狂った人も沢山出てきます。 そして善い人は皆無だったと思います。 それらが不自然と感じずに観賞出来る程に戦場の狂気が自然に描かれていたと思います。 ヌン川を遡上して行くに連れ状況は混沌としていき、人の傲慢とも言える欲望の本質から人の恐怖の本質へと移行していく様は精神的な圧迫を感じさせるのと同時に物事の本質に近づいて行くような期待感を増幅させてもくれます。 また、指揮官も既に居ないような危険地帯の最前線、ド・ラン橋の塹壕の中で戦っている兵士達がほぼ黒人兵だけ等、細かい所の描写も俊逸です。 私の考え自体が浅いのかもしれませんが作品にそれ程難解さは感じられませんでした。 「王殺し」などの神話的、哲学的なサブテーマを詩的な表現で装飾しているもののカーツがカンボジアに彼の王国を創った理由や動機なども常軌を逸しているとは言え納得できるものでしたし彼の言動も難解な言い回しや極論では有りますが破綻までのレベルにはいっていないように感じます。 真の強さを理解し、その強さに従った行動により軍と決別し、ジャングルの中で完全に現世からも解脱出来ずに息子を気に掛け、欺瞞に満ちた軍の偽りに強い憤りを覚えてしまうカーツは王国の支配者というより崩壊寸前の不安定さを孕んで彷徨いながら自らの死により崩壊を免れようとするパラドックスの中で自分で決着を着ける事が出来ずに『その時』をひたすらに待つ事しか出来ない歪な思考に囚われている戦争の犠牲者ようにも見えます。 士官学校を首席で卒業したスーパーエリートでしかも人格者と言われたカーツですが軍への不満を抱えても戦争そのものへの否定までは至らずに戦争の中で答えを見出そうとしている様は生き方は全く違いますが、戦争そのものをライフワークとして楽しんでいる感があるキル・ゴアとそれ程違いがない戦争依存者という印象を覚えました。 しかし、本作の魅力はコツコツと積み上げた小難しい理屈を一瞬で吹き飛ばしてしまうような迫力ある映像と印象的な音楽に有るように思えます。 各シークエンスでまずインパクトの有る遠景のカットで見ている者の意識を釘付けにしておいてからグイグイと容赦無く抉るように寄っていくカメラワークは分かり易さと同時にこの作品が持っているスケール感の大きさと臨場感を味わう事が出来ます。 また、ワルキューレの騎行を単なるBGMとして使うのではなく実際に戦場で流しているという演出にキル・ゴアを通してのコッポラの狂気を感じます。 全体としては脚本が幾分散漫な感がありますが映像が持っている力を教えてくれる本作は映画としての魅力は十分に有ると思います。 【しってるねこのち】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-09-12 18:06:14)
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