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《ネタバレ》 黒澤のカラー映画ってぶっちゃけどうなんだろう?、あまり良い評判聞かないけどなぁと思い、長年手を付けてなかったが、この機に本作「乱」に挑んでみた。
鑑賞してみると、いやいや、前評判を十分吹き飛ばすくらいに、力のこもった大作だった。 カラーになったとはいえ、これぞ黒澤と言わんばかりの、壮大なセットを背景に群衆や天候を縦横無尽に活用した、ダイナミックで躍動感あふれる画づくりは健在。本作ではさらに、ヴィヴィッドな色彩も重要な要素になっている。それぞれが身にまとう衣装の色の違いで各陣営・各登場人物を明確にさせる、あるいはショッキングな演出の肝となるなど、カラー映画だからこその工夫も抜かりない。クライマックスで、楓の方を処断するシーンの演出には痺れた。まさに構図で語り、構図で魅せる。さすが巨匠黒澤。 その他の見せ場でいえば、中盤の城攻めのシーンがまさに出色。蜘蛛之巣城でやったホラー的演出をさらに進化させたような場面であり、次々に斃れていく兵士たちの凄惨さ、刺し違えて自刃する女たちの痛ましさなど、このシーンだけ切り取ったとしても、日本の戦国ならではの凄惨極まる戦の表現に成功しているといっていい。 ちなみに作品の欠点としては、映画というよりはむしろ舞台劇になっていることだろう。特に狂阿弥と丹後の台詞はもはや舞台劇のそれといっていい。役者の演技はともかくとして、映画としてはかなり不自然でくどく感じてしまった。全編を通して、映画というよりは、もはやビッグスクリーンで壮大な舞台劇をやり切った感が強い。人によって好き嫌いが出るのはこのためではなかろうか。私も若干違和感を拭えなかったので、満点評価とはしていない。 なにはともあれ、世間にあまたあるシェイクスピアのリア王の翻案としては、最も成功した作品と呼んでもいいだろう。 【nakashi】さん [DVD(邦画)] 8点(2022-08-14 19:25:36)
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