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《ネタバレ》 3度目の鑑賞。観れば観るほど、噛めば噛むほど色んなドラマの面白さが味わえる素晴らしい作品だ。
初見の時は、自分がクラシック音楽に明るくないこともあって、物語の荘厳さ、絢爛さにばかり単純に目を奪われがちに終わっていた感があるが、3度目となると主人公サリエリの人間臭さ、モーツァルトの才能に裏打ちされた傲慢さ、オペラの上演をめぐる宮廷内の権力関係など、総じてまだ「近代」という黎明期を迎える前のヨーロッパ社会の人間模様の機微がじっくり堪能できるようになった。 「天才は天才を知る」とはよくいうが、サリエリはおそらく「努力の人」であり、苦節の末に宮廷作曲家の地位を得たのに、ポッと出の無粋で幼稚で能天気な「天才」モーツァルトに一昼夜にしてその地位を脅かされそうになる悲哀。 だが、サリエリはそんな憎むべき怨敵であるはずのモーツァルトの突出した才能を誰よりも見抜いていた。それもまたサリエリの才も秀でていたゆえに他ならない。だからこそ、宮廷内で嫉妬込みの侮蔑の的になる彼を擁護することで、おのれの音楽家としてのプライドを「名伯楽」という自己満足で充たそうとする。そんな陰湿で屈折しまくっていながら、どこかモーツァルトに父性的な感情も覚えていくサリエリをしっかり自分なりに肉付けし、抑えた演技で造型してみせたF・マーリー・エイブラハムの力量は凄まじいの一言である。 人間がその時その時に置かれた環境のなかで何を選択し、何を主張し、何を保持したいか。そんな心理の動向を近代以前の世界において描き、かつ壮大なクラシック音楽の楽しみを存分に加味して超一級のエンターテインメントに仕上げている。 まさに「映画を観て幸せだな」という溜め息が絶えない20世紀が誇る傑作だ。 【あやかしもどき】さん [DVD(字幕)] 10点(2025-04-05 06:38:21)(良:1票) ★《新規》★
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