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年頃になった娘の結婚をめぐる父親の葛藤という日本のホームドラマではお約束となった筋書きだが、本作品の時代は昭和30年代である。周知のように新憲法により「婚姻は両性の合意に基づく」として、戦前までのように家長の合意を婚姻の要件とする「家の秩序」否定されてから十年そこそこの時期である。
子どもが結婚するとなれば、親が用意した縁談→見合い→結婚というプロセスがまだまだごく自然であったわけである。 佐分利信演じる昔気質の父親が恋人との結婚を言い出した長女に対して、やれ相手の家柄だの家計だのをあげつらって結婚に反対したり、最終的には娘の結婚に同意するもそこに至るまでに結婚相手の氏素性を興信所に調べさせるといった光景はあながち昔の話ではなく、近年までみられたものであり、「結婚とは個人同士ではなく家同士のもの」という日本ならではの結婚観(日本よりも儒教倫理の厳しい中国や朝鮮ではもっとそれが鮮明なのだろうが)が色濃くて本作を辛辣なものにしている。 これが、見るからに家長オーラバリバリの佐分利信の役が、今回は脇役に回っている笠智衆であったなら、もっとユーモラスで憎めない父親像になっていたに違いないが、その上でどういう家長的キャラを表現したのかという興味が沸く。 【あやかしもどき】さん [DVD(邦画)] 8点(2025-01-14 00:22:12)
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