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《ネタバレ》 これは、大人の鑑賞にも耐える映画ですが、ぜひこころちゃんと同年代の子に観てほしい、とてもデリケートな映画ですね。
お城に入れる時間が9時から5時というのが良い設定です。基本的にこの時間は、学生でも社会人でも他人と関わらなくちゃいけない時間です。その時間を、人並みに他人と共有出来なかった子が、この7人って事になりますかね。 学校でいじめのターゲットになっていたこころが、お城ではみんなと一緒にウレシノを下に見るのも良い。少人数でも人が集まれば社会が形成されて、上下関係を作り、自分の立ち位置によって居心地の良さが決まる。 鍵を探すのが彼らの使命であり権利。鍵を見つけずに最後まで過ごすか、鍵を見つけて願いを叶えるかは、各々の自由。ここがまさに、社会に出ていくか、不登校を続けるかの、使命と権利に思えます。 こころの願いは真田さんを消すこと。…消してどうする?真田さんが居なくなれば、自分は社会(学校生活)に復帰することが出来る。って、こころは考えたようです。靴箱のところで萌ちゃんとバッタリ会ってしまった時のこころの気持ちがよく解るし、実は学校でも状況が変わっていて、萌ちゃんのこのときの心境も解るようになってます。 とっても芯が強い萌ちゃんですが、真田さんと遊ぶようになってから、教室でこころに対しバツの悪い表情を見せるところとか、とても人間臭く感じました。 ツッコミどころは多々あります。私はアキの制服姿で気が付きましたが、何か月も一緒に過ごしていたら、もっと早く気が付きそうです。お城の話を一か月とかの短期間にまとめた物語にしなかったのは、不登校や心の傷の解決には、1年とかそれくらいの長い時間が必要だから、敢えて延ばしたんだと思いました。 マサムネの携帯ゲームなんて危ない橋渡ってます。中学の頃って、一学年上だとスッゴイ大人に見えましたよね。スバルはきっと早いうちに秘密に気が付いていたかもしれませんが、アキはそんな男の子のオモチャに興味がない年頃でしょう。過敏に反応しそうな'99を空欄にしたのも、実は巧い演出。そして上映時期や原作のタイムリー世代が、こころじゃなかったところは、後から気が付きました。リオンは望んだから、それが叶った。でもアキはどうして?…でもこういうのが引っ掛かるのって、大人な証拠ですよね。同年代の子はもっとスーッと入り込めたんじゃないかなぁ? マサムネが考え付いたパラレル(異世界)をオオカミさまが全否定するのも良かった。『そんな都合の良い逃げ道なんてないんだよ』って感じで。 お城の話は大団円で幕を閉じますが、叶えた願いは現実世界には何の影響も与えないものです。そして現実のイジメ問題は解決した訳ではなく、鍵の力を借りたのでもなく、こころがお母さんや喜多嶋先生と地道に乗り越える道を選んで前に向かいました。この映画は何か不思議な力で他人や状況を変えるのではなく、周りの力を借りて、ゆっくりでも自分の意識を変えていく映画です。そこがとても繊細に描かれていました。 真田さんと和解に向かわないのも、とっても良いです。だってそんなの必要ないんだから。「(真田さんたちは)10年後も20年後もあのままだよ、きっとロクな人生送らないよ」「バカみたいだよね、たかが学校の事なのにね」その通り。 エンディングが“前向きに歩き出したこころのその後”ではなく、何故かオオカミさまが全部持って行ってしまいます。でも実はこの映画、オオカミさまに始まり、オオカミさまで終わっていました。オープニングの“行きたかったけど行けなかった”子の代わりに、今の私には何ができるのか、考えてしまいます。 で、エンディング。機会があれば4枚の絵の、リオンのお母さんに注目してください。とってもデリケートな作品なのが滲み出ています。 【K&K】さん [DVD(邦画)] 8点(2025-03-23 14:52:26)《新規》
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