飢餓海峡 の K&K さんのクチコミ・感想

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飢餓海峡 の K&K さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 飢餓海峡
製作国
上映時間183分
劇場公開日 1965-01-15
ジャンルドラマ,サスペンス,モノクロ映画,犯罪もの,ミステリー,刑事もの,ロマンス,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 W106方式という撮影技法のためか、映像が荒く製作年よりも古い作品に見える。
この方式の影響か解らないけど、軽快で躍動感があるカメラワークが面白い。
トラックが到着して、そこから警官隊がワラワラ降りてきて、そのまま舟に乗り込んで出港までを勢いよく撮り流す。
東京の下町の人混み。そこで客引きをして働く八重。警官が捕物を始め、逃げるタチンボ達。柱に隠れてやり過ごす八重。飲み屋街に逃げる頃にはカメラは屋根の上。後ろを振り返りながら逃げる八重、ゴミゴミした飲み屋街…ここまでワンカット。
こんななめらかに動きのある映像、当時どうやって撮ったんだろう?

イタコの話は訛りが強くてよく解らないけど「(三途の川を渡ってしまえば)我が戻る道は一筋もござらい」のように言っている。八重のマネ「戻る道無いぞ~、帰る道無いぞ~」。イタコを知らない多吉は、その言葉を自分の運命と重ねたんだろう。多吉にとって津軽海峡が三途の川。
共犯の二人は多吉が殺したんだと思う。
帰り際「今度いつ来るの?」と言う八重、戻る道がない多吉。お代の50円とは別に渡した34,000円は、殺した二人への供養の意味もあったと思う。犯した罪を善行で償おうとしたんだろう。その後も善行を重ね続ける。臆病だから罪を認める勇気もない。
樽見と名を変え、自分なりに罪を償って、余生を過ごしていたところに八重が来る。この時の樽見の落ち着き具合は、見ていて多吉とは別人じゃないかと錯覚させる。忘れたい過去の自分を10年も探していた女。衝動的な殺人。
10年前の自供は、もしものときのために前々から用意していた筋書きだろう。
何とか助かる道を模索する樽見に弓坂が見せる舟の灰。善行で罪を償ったつもりでいた自分を、10年も追ってきた人間がここにもいた。
「戻る道無いぞ~、帰る道無いぞ~」
八重殺しを自供することも、隠し通すこともしない、出来ない。
現世でも地獄でもない三途の川、津軽海峡に身を投げる多吉。臆病な善人らしい最後かもしれない。
K&Kさん [CS・衛星(邦画)] 9点(2021-05-28 11:13:29)(良:1票)
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