駅 STATION の K&K さんのクチコミ・感想

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駅 STATION の K&K さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 駅 STATION
製作国
上映時間132分
劇場公開日 1981-11-07
ジャンルドラマ,サスペンス,ミステリー,刑事もの,ロマンス
レビュー情報
《ネタバレ》 大みそか~元旦に架けてのタイミングで観たい映画でした。この度、願い叶っての視聴でしたが、心地よい眠りに落ちてました。。。で、新年に再視聴。
雪深い港町。場末の居酒屋で美人の女将とNHKで紅白観て、八代亜紀の舟歌、そして深夜の初詣…日本人の心にじんわりと沁みますねぇ。でも“演歌”って、遡ると昭和40年代から昭和末期までの、20年ちょっとブームになった、当時の流行歌だったんです。ある程度年齢を重ねた男女の歌。身勝手な男と泣かされる女の、しみったれた関係を歌った、この“日本人の心=演歌”という一大ムーブメントは、この映画の頃がピークだったと思います。この映画は、そんな演歌のイメージビデオのような作品でした。

ロケーションが絶妙でした。日本海・増毛という終着駅が舞台です。そこから船で行く御冬。当時、海路でしか行けない陸の孤島でした。作中、伯父さんが語ったように、御冬は国道231号で陸路が繋がります。便利になった反面、単なる通過点の田舎町になってしまいましたが…
吉松を捕まえる上砂川駅の線路の多さに驚きです。この映画のすぐ後に炭鉱が閉山し廃線。人口も激減し、民家が点在するだけの集落と化しています。今も昔も札幌の街はにぎわってますね。パルコや西11丁目駅が懐かしい。留萌に人が溢れてて、まだ映画館があるのが時代を感じます。
北海道って札幌のようなオリンピックで急発展した都会があって、田舎は田舎のままで懐かしさを感じさせ、寂れた港町に炭鉱に陸の孤島が、まだある。徐々に近代化が進み、失われつつある懐かしい日本の風景。演歌と共に、これぞ日本人の心!ってイメージを創りあげてます。

ストーリーは、刑事ものとして森岡を追う映画かと思いきや、英次の目を通して、その時々の3人(3.5人?)の“女”の生き様を観せる映画でした。でも最初の女二人が映画の尺としては短めで、続く桐子がメインなため、一本の映画としてはバランスが悪い印象を受けます。
元妻・直子。彼女の浮気が原因らしいが、そもそも家庭を顧みない(と思われる)英次に三下り半を突き付けられる。涙を流し、笑顔で敬礼する直子…もうエンディングの画ですよね。夫婦の物語の、エンディングから、この映画は始まります。
犯罪者五郎の妹・すず子。兄思いの彼女を、自分の妹・冬子にだぶらせる。地元に置いてきた冬子が、兄とずっと暮らしてるすず子に似ているのではなく、カッとなる性格という部分が、自分と五郎をだぶらせる。すず子を使い捨てて、アッサリ他の女と一緒になる雪夫の“どのツラ下げて”感。まさに演歌の『弄ばれて捨てられた女』ですね。
そして場末の居酒屋の女将・桐子。帰る場所(家庭)の無い、英次のような男が行き着く場所として、最高の舞台です。歌登出身の桐子が、増毛で居酒屋を始めた理由は不明です。続けてる理由は何となく…でもこんな客が来ない店、当時も続かなかったろうな。英次が立ち寄るためだけに、ポツンと存在する居酒屋。ふつうこんな、独り身の美人女将の店なら、スケベオヤジが居座るか、常連のたまり場になってるか。まぁそんな連中も年越しは家族のモトに帰るんですね。
星座で相性の良さを伝える桐子。御冬神社のお守りを渡す英次。最果ての街から、ぼんやりと新しい人生を歩み出せそうな二人の悲しい結末。この時の、事情を知らない倍賞千恵子の演技の素晴らしさ。前の男が居るタイミングで新しい男が来てしまったバツの悪さから、英次が森岡を知っていることに驚き、森岡から英次(桐子は営林署の人と思ってる)を守ろうとしたところ、森岡の方が撃たれる。全てを察した桐子の「…そういうことか」で終わる二人の新しい人生。
出会い、愛を育み、別れる。三度流れる舟歌の使い方が素晴らしい。終着の増毛から留萌へと向かう汽車(電車か)。見送る人のいない出発。あぁ、日本の心・演歌の世界。

後半、お笑いパートを挟んでくるのが素晴らしい。武田鉄矢との“添い寝”はニヤニヤが止まらなかったです。劇中唯一の英次の心の声『樺太まで聞こえるかと思ったぜ』も、おしとやかな倍賞千恵子のギャップ&不器用な影でそんなコト思ってた健さんのギャップがサイコーでした。
でもね私が一番吹き出しそうになったのは、札幌へ帰る英次を桐子が駅で見送るシーンです。「まだ時間あるぜ」「…じゃね!」のあと、桐子が閉めた出口の扉が、勝手に開くのです!!倍賞千恵子が閉めたけど閉まりきらず、5cmほど隙間のあったアルミサッシの扉が、自然とスーーっと開くんです。その扉から高倉健が「桐ちゃん!」と出ていきます。あぁ扉の裏でスタッフが隠れて開けたのが、映っちゃったんでしょうね。“健さんに扉開けなんて雑用させられない”なんて、スター俳優様の扱い。なんか、凄い時代だったんですね。
K&Kさん [CS・衛星(邦画)] 7点(2025-01-05 18:45:39)《更新》
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