1.《ネタバレ》 ファスビンダーは、“ニュー・ジャーマン・シネマの天才”と呼ばれる監督だ。
そんな彼の代表作ともいわれる本作『ベロニカ・フォスのあこがれ』は、ベルリン国際映画祭で金熊賞(最高賞)をとった作品。
ただ、ベルリン国際映画祭の受賞作品については、個人的にはイマイチ相性が悪い。
それに加えて、上記二人と比べたファスビンダーの知名度の低さを考たりすると、“嫌な予感”も無きにしもあらずだったが・・・
本作の主人公は、かつての名女優という設定。
それがどんなわけかモルヒネ中毒となっている。
しかも、やや多重人格な傾向があり、いまだにかつての栄光を忘れられないでいる。
たまに女優業としてのオファーもくるが、それは端役ばかり。
しかも、彼女はその事実をなかなか素直には受け入れることができないでいる。
そして撮影中も、モルヒネの禁断症状が出るとまずいので、常に薬漬け状態。
一体、何が彼女をそうまでさせてしまったのか?
どういう流れでモルヒネにまで手を染めるようになったのか?
、、、といったようなサスペンス的な展開で物語は進行していく。
どうやらそこには犯罪の陰があり、彼女自身がモルヒネを打っているのではなさそうなのだ。
偶然、主人公と知り合った中年の男性は、そんな彼女の暗い過去に興味を持つ。
そして彼女の身辺を洗う。
すると、そこには凄まじいまでに残酷な物語が隠されていたのだ・・・
と、まあ粗筋を語ればこんな感じなのだが、独特なスローなリズムがあって、かなり退屈したのは事実。
別にスローな展開が嫌いなわけじゃないけども、妙に大人のメロドラマ的な様相とも相まって、自分には馴染めなかった。
例えてみれば、昼間の“退屈”な時間に偶然テレビで観てしまった“退屈”な昼メロといった感じか。
むろん、これは言いすぎです。
そんなにレベルは低くはないです。
だけど、その様な系統の作品であるように感じたことは事実。
そこに人間の残酷さ、人生の儚さなどが巧みに描き足されてパワーアップした感じ。
そして栄華を極めた者が、その後に陥る絶望が浮き彫りにされている。
そこら辺りの描かれた方はさすがの一言で、ファスビンダーの凄さを垣間見た気がした。