20.《ネタバレ》 コメディではない&チャップリンが出ていないということで私も敬遠していましたが、ファーストナショナル以降は全て見てしまったのでついに本作も鑑賞しました。残りの超初期短編シリーズは流石にディスクを購入しないと網羅できそうにないですね。 結論から書くと本作「巴里の女性」は素晴らしい映画でした。もちろん多少粗削りに感じる部分も無い訳ではありませんが、この作品が101年前のものであるという事実を考えると無視できる問題です。また本作はサイレント映画であるのにシリアスなロマンスを詳細に描いてあるという事実にも驚きます。そしてチャップリン映画ではお馴染みの相手役エドナ・パーヴァイアンスを主役とし、チャップリン自身は出演せず監督に徹しているということも、この映画を見るべき理由の一つです。 上記の通り、チャップリン作品の中では極めて異例な本作ですが、落ち着いて鑑賞してみるとこれがとても完成度の高い映画であることに気付きます。現代人として意識せずに見ていますが、サイレント映画なのに人間の感情がとてもよく表現されていることに驚きます。他の方もおっしゃるようにコントラストや陰影を上手く取り入れてあり、影だけで人と成りや状況までも表現しており、これは紛れもなくチャップリンが製作者としても一流であることを示しています。 有閑紳士ピエール・ルヴェル(アドルフ・マンジュー)の振る舞いや仕草が本当に素晴らしく、この映画をより奥深いものへと昇華させています。元来田舎の底辺人種であるマリー・サン・クレール(エドナ・パーヴァイアンス)が真珠を拾いに行くシーンにそれぞれの価値観が象徴されていて、これを腹を抱えて面白がるアドルフ・マンジューの表情や仕草はとても意味深く、この映画随一の見せ場になっています。そもそも全てを自由にできるピエールが面倒なマリーに執着する必要性など全くなく、なぜ彼女を手放さないのかも興味が尽きません。 マリーお抱えのマッサージ師の表情もとても興味深く、友人の裏切りを告げ口するフィフィ(ベティ・モリセイ)の言葉にシッカリ聞き耳を立てていて、サイレント映画でここまで表現してしまうともう恐れ入りましたとしかいいようがありません。 後半、ピエールと決着をつけたマリーが駆け付けた部屋で、ジャン(カール・ミラー)と母との会話を聞いてしまった時の心情を後ろ姿だけで表現したり、ラストに泣きすがる姿も「絵」として完成されていて言葉が必要ないシーンに仕上がっています。オチのつけ方も100年後の私たちが見ても納得いくもので、極めてよく出来た映画でした。チャップリンファンでしたら見抜かっていはいけない重要な作品の一つです。 【アラジン2014】さん [インターネット(字幕)] 9点(2024-11-15 10:40:33) |
19.冒頭での自身が出演していない断り書きに、そんな作品があるのにビックリ。金に恋したマリーとひ弱いジャンの悲恋が描かれています。上流階級面々の髪型・メイク・顔つきが卑しさ全開で、乱痴気騒ぎは観るに堪えない下品さ。チャップリンの冷ややかな視線を感じます。その極めつけがマリーがネックレスを取り戻すシーン。建設的に生きて行こうとするラストはチャップリンならではのもの。 自らが立ち上げに参加して存分に腕を揮える自由を得たユナイテッド・アーティスツでの第一作は見応え有る力作でした。 |
18.《ネタバレ》 描写の繊細さやラストシーンの美しさは評価したいのだけど、肝心の話にあまり乗ることができなかった。チャップリンのコメディと比べると独創性に欠けるのでは?どこにでもありそうなソープオペラというか、キーストン社時代に制作した「チャップリンの画工」を発展させた話ですよね。「画工」はコメディにシリアスな要素を取り入れた先駆者であるチャップリンらしい映画ではあるのですが、いかんせん失敗作でした。画工チャップリンの失恋話に面白みが欠けていたのです。本作はその失敗を引きずってしまったような気がします。田舎町の駅での描写など好きなシーンはあるものの、それ以上のものがありません。ペドナが好演したとも言えず、むしろ脇役の演技が光っているのはチャップリンの意図したところとは真逆でしょうね。 【カニばさみ】さん [DVD(字幕)] 6点(2015-11-02 20:53:14) |
17.コメディではないこと、自分は出演していないこと、というチャップリンの弁解めいた但し書きで始まる作品ですが、冒頭シーンでの、二階に幽閉された女と、通りに立つ男とのやりとり、まずここだけでもう、相当に気合いの入った演出に、引き込まれます。で、ここでは、貧しさと親の反対という障害を抱えた彼らは、強く惹かれあい、結ばれていたはずだったのに、ひょんなことから離れ離れになった彼らを、「ブルジョア社会」が切り裂いてしまう。富は、さまざまなチャンスをもたらすかも知れないけれど、ここでは、ひたすら辛口な視点でブルジョア社会が描かれ、二人のすれ違いは決定的なものとなっていきます。あの、投げ捨てた筈のネックレスを人に盗られまいと拾いに行く場面で付きまとう犬の皮肉な描写、マッドマックスのリンチシーンでも引用されていましたが(ホンマかいな)。実に見事な作品です。チャップリン作品を「どれだけ笑えたか」でしか語ってこなかったことへ、反省。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2014-05-11 16:29:36) |
16.《ネタバレ》 このヒロインは、恋人をきちんと追求しない。つまらないプライドが邪魔をしているのか、欲望に忠実なのを浅ましいと感じるのか、要するに相手の男をたいして好きでもないのか。親への縛りに苦しむ男に対してつい短気を起こして、「そうならべつにいいわよ」とばかり身を背ける(二度も)。それが本人を含めて皆の不幸になる。 Pride can hurt you, too(ビートルズ) 【ひと3】さん [DVD(字幕)] 6点(2013-08-03 10:30:10) |
15.《ネタバレ》 うまくいかない世の中、みなで傷つけ合ってそれで寂しがってる。マンジュー君も寂しい。ヒロインも、友人に婚約発表の雑誌見せられてフフンと強がってみせたりして、哀しい。また父の反対・母の反対が悲劇を進行させていく要因になっている。でラストで寛容を説くわけなんだけど、この時代の潮流なのか、このころの映画は何でもかんでも寛容を説きたがってる。革命やら世界大戦やらの動乱の反動で理想主義の時代だった、ってことだけかもしれないけど、映画というもののそもそもの寛容性・何でも取り込んでしまうフトコロの広さにこじつけてしまいたい気持ちもちょっとある。青年が着飾ったヒロインの絵を描くんだけど、カンヴァスには昔の質素な彼女が描かれていく、なんてとこが憎い。こんな生活いや、と言いながら窓から投げた首飾りを拾いにいくなんてシーンの残酷さ(犬がついて走ってる)などドキッとさせられる。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-07-16 12:25:11) (良:1票) |
14.《ネタバレ》 当時のブルジョアの皮肉を込めながらも、恋愛映画。意思が固まったかと思っても、他人の一言でコロコロ意見の変わるジャンや、自分勝手なマリーに共感できないのが一番痛い。そして、恋愛がうまくいかないからといって死なないでほしい。ラストはうまく締めているが、ジャンの母が一番かわいそうだった。監督をしながらチャップリン自身が出演しなかった唯一の作品として観る価値はあるが、話自体がそれほど面白くなかった。 【TOSHI】さん [DVD(字幕)] 5点(2008-01-21 23:04:08) |
13.チャップリン凄い、このラストシーンは素晴らしい。いやぁ、このオープニングがあって、このラストがあって、音楽も含めた素晴らしい表現力があってこの映画の醍醐味がある。まさに本気汁出まくり、柱となるテーマの描き方と起承転結の模範でフィルムの保存状態もパーフェクト。 【よし坊】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2006-08-06 23:51:36) |
12.チャップリンが俳優として素晴らしいことはどの映画を観ても解る。この作品にはチャップリンは出てきませんがチャップリンが俳優としてだけでなく監督しても超一流であるということを証明した名作!これも見事なメロドラマに仕上がってます。真のチャップリンファンならこの作品も当然、高い点数付けるべきだと私は声を大きくして言いたい。 【青観】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-06-12 09:24:21) |
11.《ネタバレ》 残念ながら伝わってこない何も。そりゃ当事者たちの気持ちになってみれば心の葛藤大変なんだろうけど、エドナにしてみれば別に不幸な悩みを抱えてたわけではなかったでしょうが、勝手に暴走して電車に飛び乗って行っちゃってたわけなだし、相手の気持ちや状況を考えもしないで自分勝手もいいとこで・・ そしてほら、オイ青年!そんなんでいちいち死になさんなよ、年老いた母ちゃん残してんでしょうが、別に人生に疲れ果ててしまってにっちもさっちも行かなくなってしまってたわけでもないでしょうが、もちょっ~と考えてから行動いたしましょうよ、 そんなこんなで二人には同情の余地なんてまるでないね、喧嘩両成敗っていうか、もう結末の意外さ以外は全然だめです、アウトです。最後のほうなんてどうでもいいやって思ってしまいましたもん、※なので作品的には非常に残念、もっとかなり品位あるものをイメージしていた そして期待していただけに 【3737】さん [ビデオ(字幕)] 1点(2005-06-06 22:48:44) |
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10.《ネタバレ》 久々に観てみて大正解。6点→7点にアップです。 光と影だけで電車の到着を表現したと、評論家もそのアイディアを絶賛するほどの例のシーンですが、現代の映画しか見ない人にとっては、“たかが光”と、目もくれないでしょうが、それは感性が鈍っている証拠でしょう。 また、冒頭でマリーの父親が階段を登るシーンですが、壁に映る影を異様に大きく見せることにより、これだけで怖い人物が上がってくるということが、影を見ただけで解ってしまう。 今の世の中、電車を画面に出さずして電車が到着したことを表現し、階段を上がってくる人間の顔を見せずしてどんな人なのかを描くことができる映画監督が一体どれだけいるでしょうか。 他にも、チャップリンの優れた映像作家としての仕事だけでなく、人間に対する鋭い視点というものも見て取れたような気がします。 それは、マリーがマッサージをしてもらっているときに、その隣で女性たちが色々と噂話をしているときのエステティシャンの軽蔑の表情を何度も何度も執拗に映していたところや、窓の外にネックレスを投げ、それを通りかかった男に持っていかれて慌ててネックレスを取り返しに行って戻ってきたときのピエールの笑い方もどことなく不気味な感じもします。 また「最後にもう一度だけ会いたい」と、好きな相手に渡した手紙を他の男に見せてしまうというのは、差し出した男にとっては相当な屈辱に違いありません。 母親と息子の関係もしっかりと描かれていますし、どんな境遇のどんな人間に対する描写も、ぬかりなく良く描かれているなぁと感じました。 【もっつぁれら】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-05-09 01:01:20) |
9.華やかなタイトルとは裏腹に、けっこう残酷な愛の物語。時代性を考えると凄い作品なのでしょうが、最近の映画に見慣れてしまっているせいか、ただ普通のラブロマンスという感じでいまいちしっくり来ませんでした。チャップリン本人が出ていないシリアスドラマという点では、凄く新鮮な感じがして「観て良かった!」と思えます。それにしてもあのアドルフ・マンジューという人のほんわかとした顔は、役柄上嫌なヤツだとは分かっていてもどこか憎めない感じがしますね。それどころか彼が画面上に現れると妙に場が和んだような気さえするから不思議です。 【かんたーた】さん 6点(2004-08-18 20:45:08) (良:1票) |
8.コメディではないチャップリンの作品ということで不安感を抱きながら鑑賞しましたが驚いた!少し物悲しいメロドラマですが、役者の名演、脚本の素晴らしさ、それらを十分にバックアップしているBGM、チャップリンものの中でも屈指の名作でしょう。映画人としてやはりチャップリンはタダモノではないですね。大好きな作品になりました。 【たにっち】さん 9点(2004-05-14 17:24:28) |
7.私には全く理解できない、というより理解したくない。自分本位の人間ばかりで気に入らない。ラストのハッピーエンドが虚しい欺瞞を感じる、彼等の本性は自分勝手な人間なのだから。一つ一つのシーンも間の長さが気になり、もっとコンパクトにして欲しかった。 【亜流派 十五郎】さん 0点(2004-03-20 11:17:07) (良:1票)(笑:1票) |
6.《ネタバレ》 映像の雰囲気からして、他のチャップリン作品と違うのに驚いた。パーティの場面でさえ陰がある。映像の見事さは他の方が指摘されているので割愛するが、ナイフでえぐり出すような心理描写がすごい。ジャンが母親に「結婚しない」と言うのを立ち聞きしたマリーの後ろ姿にしびれた。台詞も色も、表情さえ見えなくてもこんな表現ができる、と言うのに衝撃を受けた。STING大好きさんの言われる通り、後期作品群への布石たる作品。それにしても、ここまでのものとは思わなかった。チャップリン最後の作品となった音楽も素晴らしい。 追記:劇場公開されたものを観た。レンタルのVHSの映像はかなりひどかったが、今回のものは映像がだいぶきれいになった。表情の演技が堪能できる。そして改めて思うのは、エドナ・パーヴィアンスをはじめとした俳優陣の名演。 【アイカワ】さん 10点(2003-11-23 15:32:57) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 長年の共演者エドナのために作ったメロドラマ。すれ違いで悲恋に終わるんだけど、この女性は恋人の母と共に孤児を育てるという生き方をする。波乱の人生の末、笑顔で新たな人生を選択した一人の女性がすがすがしい。ボディアクションなしのコメディでもないシリアスドラマのうえ、わずかな字幕のサイレントでここまで微妙な心理描写ができているのに気がつくと、やはりその演出手腕はすごいことだと感心する。 【キリコ】さん 8点(2003-11-14 16:44:55) |
4.自分はやっぱりチャップリンはコメディだな。と思った。 |
3.ビデオで見ました。いや~メロドラマを作ってもチャップリンは天才なのだ。主人公の女性が、金持ちの情夫に嫉妬して、もらった高価な首飾りを窓から通りに投げ捨てる、たまたま、そこに通りかかって、首飾りを拾って行ってしまった乞食の後を、あわてて追いかけていく(自分が捨てたくせに)。その姿を見て、おかしくてたまらんと涙を拭いて笑う情夫、その演出、その笑い方・・・ただごとでない凄さだ。女の業を女以上に知り尽くしたチャップリンの洞察力に怖くなった。映像的にも鋭い感覚を見せてくれる。列車の通過を主人公の顔に映る光と影だけで表現するあたり、チャップリンは映像作家としても天才なのだと実感した。 【ひろみつ】さん 10点(2003-05-04 21:53:59) (良:1票) |
2. 勿論10点満点!チャップリン自らが役者として出しゃばらなかった分、最もその作家性が色濃く出ている点で、個人的には彼のベストとして推したい。言っておくが、コレが公開されたのは大正13年だからね。既にこの時点で高い(安易なハッピーエンドではない)ドラマ性を追求している先進性をキチンと評価して貰いたいと思うナ。心の伴侶エドナ一世一代の主演を最高の形でプロデュースしたチャップリンの監督として、オトコとしての尋常ならざる矜持を踏まえて観れば、アッという間の81分…最高!! 【へちょちょ】さん 10点(2002-12-31 18:52:35) (良:1票) |
1.メロドラマ、喜劇なし、チャップリン出演も1カットだけと、影の薄い作品ですが、珠玉の名作です。後年すれ違い映画(哀愁、そういえば日本でも孫コピー映画があった、マチコ巻き?)のはしりです。人の人生は偶然と勘違いの産物ですね、そう納得してしまう%2C形而上的な哀しいメロドラマです。長年チャップリンの相手役をしていたエドナの最初で最後の主演作品。この作品を観ると「画質」ってなんだろうと思いました。「イントレランス」も同様ですけれど。 【NineBar】さん 10点(2000-12-26 05:34:08) |