1.このタイトル見ると道中ものだと思うじゃないか。最初はそうなんだけど、映画の大半は金谷の宿にいて、全然「五十三次」じゃないの。森の石松やお染久松を絡めて賑やかにはしている(お染はまだ林玉緒時代の中村玉緒、誕生日前なら14歳か)が、タイトルから期待した道中ものの晴れ晴れとした気分は味わえなかった。高田浩吉が二枚目半の役どころでこっちが主役、ひばりは画面に出てはいるんだけど、あんまりドラマの進行に積極的な意味を持ってなく、脇にいるだけで手持ち無沙汰という印象だった。とにかく出ていて歌えばファンは納得したのだろう。のちのこの監督の才気はうかがえなかった。バックの音楽が童謡・唱歌をはじめいろいろ何でも流れてくるのが楽しくはあった。夫婦が別れの場では「花も嵐も~」、妹探しの道中では「上海帰りのリル」、お祭りのシーンでは当然「お祭りマンボ」、飯田蝶子と左卜全の場では「オールド・ブラック・ジョー」。これはおそらく年寄りということで使われたので、飯田蝶子の名作、小津の『一人息子』でも使われてたこととは無関係であろう。