1.《ネタバレ》 猪木が大きく見えない。普通サイズの人に見えてしまうのはなぜなんだろう。歳老いて、腰も曲がってきているせいなんだろうか。今までずっと見慣れてきたリーゼント頭ではなく今までの猪木とは無縁だった全白髪という風貌のせいでもあるのだろうか。それに加え 足を引きずるような、まるで軽やかでないあの歩き。長屋暮らしの近所の老人たちに混じっても別に違和感なく溶け込んでしまっている猪木という男に不思議さと哀愁を弥が上にも感じた。 また、その歩き方について思うことは、あの歩き方こそ今現状の猪木の地の姿なんだろうか。それとも辻監督からの指導によって芝居をしているだけの歩き方(演技)なのだろうか。そうであって欲しいと思う。後者であって欲しいと願った。心から。 そんな猪木に絡んでくるタクローという親の愛を知らない男の子。設定上、いじめられっ子ということではあるが、顔はうつむいていないし、陽気さだって忘れてはいない、それにメソメソしていないところがよい。そんな彼と猪木が二人きりで穏やかに暮らし始めた数日間。片や子供、片や老人という立場の違いもありながら、お互いを思い合う気持ちは一緒。事態はお互いの助け舟によって予期せぬ展開へと進んでいきます。良いシナリオを良い子役と良い猪木(?)でキレイにまとめ、最後上手く締めてくれていたと思います この作品。 辻仁成、猪木という高級食材をよくぞ上手く調理した。そう思えましたね。よくぞ期待に応えてくれましたという思いでいっぱいです。 ところで最後近くのシーンなんですが、夢の中で猪木が真っ白なリングで一人格闘するシーンですが、最初このシーンは要らないんじゃないかなとさえ思った。 しかしです、思い返してみるとそうではない。あのリングでの一人格闘によって彼はエイジへの未練を断ち切れた。絶対的に必要なシーンだったですやん て‥ すごく記憶に残るシーンとなりました。