1.カンヌで審査員賞受賞ということで期待していたが、かなり退屈な映画だった。登場人物のアップに頼る撮り方は出来の悪い日本映画に通じるものがある。内戦下のチャドで、とあるリゾートホテルのプールの監視員をしている老人(かつての水泳チャンピオン)とその息子の葛藤とその結末がこの映画の背骨だ。自らの仕事に誇りを持っている父は自分の息子にもプールの監視員の仕事を教えているのだが、ある日、人員整理のため彼は息子に職を譲って引退するように経営者から命じられる。これだけ聞くと、とても面白そうなテーマである。この父と子の緊張関係に何人か他の登場人物を登場させ、適当なドラマを生起させれば、いい所まで行きそうである。しかし、この作品からは圧倒的にエピソードが欠落している。
いくつか印象的なシーンはある。父と子がプールの周囲に夜間用のチェーンをかけていくシーンや自宅での母親を交えた夕食のシーン、息子のガールフレンドが歌い始めるシーンなどだ。でも、その背後にあるのは茫漠たる時間の延長だ。これらの良いシーンが出てくるまで、僕らはずっと砂を噛むようなシーンを前にして、ジリジリしながら待たなくてはならない。そして、作品を観ている間に待たせられるなど、せっかちな僕には我慢できない。