2.《ネタバレ》 35mm版で観ました。
芸術の国フランスと言われるほど国民の美の意識が高いフランス人ですが、国家が成り立つ遥か昔、氷河時代にはその美的センスのDNAが既に組み込まれていたのだという事が分かります。
壁画の描写はまるで水墨画のよう。動物の体の輪郭は濃い色でくっきりと、体の内部は淡い色を用いて皮膚の質感を表現したり、またキャンバスの使い方も平面ではなく敢えて凹凸のある場所を選ぶことにより脚の動きを表現しようとする大胆なチャレンジ精神などが見て取れ、描いた人のセンスと工夫がとてもよく感じられて驚愕するほどです。
カメラワークも、いろいろと制約がある中での作業のためスタッフの苦労は想像に難くなく、暗い中で照明の角度や明るさに微妙な変化をつけることで壁面の細かな凹凸を浮き立たせながらじっくりと壁画の一つ一つを再現していたのは良かったですが、出来れば氷河期当時の人間が見ていたのと同じように松明の光で照らすシーンが出てきても良かったのではと思いました。
映画の終盤、製作者はこんな貴重な洞窟にも危機が迫り既に影響が及んでいる事の重大性を主張したかったのだと思いますが、ラジコンヘリにカメラを積んでアーチ橋の手前にいるスタッフを空撮するシーンを含め、この二つのシーンは完全に蛇足でしょう。
日本の鍾乳洞でも、発見されて間もない頃は煌びやかだったのに、一般に公開されてからは呼気中のCO2によってくすんでいってしまったという話を聞いた事があり、3万年もかけて形成された宝石のような洞窟も、わずか数年で輝きを失ってしまうという儚さを持つものなのだという事は感じ取れた気がします。
それと、邦題はもう少しシンプルにするべき。