1.《ネタバレ》 巨匠シドニー・ルメット晩年の作品ということで
鑑賞致しました。
往年の名作のような映像的重厚さはないものの、
彼の作家性は本作でも貫かれています。
それは言うならば、人間というのはそんな単純な
ものじゃないんだから、簡単に白黒つけたり
偏見の目で見たりするのは良くないよ、
ありのままを見てくださいよっていうことです。
だからこそ、社会的には悪人のレッテルを貼られても
おもわず肩入れしたくなる登場人物がルメットの作品には
出てくるわけで。本作の主人公、ディノーシオもやはり
そんな人物。悪名高いファミリーの一員でありながらも、
彼の「仲間を裏切らない」忠誠心というものが、
やはり胸を打たれる。
ただ、原告側のおっちゃんも言っていたように、
ディノーシオのキャラだけで裁判が有利になったのも
また事実だと思うし、あれだけ長い裁判だと陪審員たちも
被告人たちにだんだんと思い入れを強くしていくのでは
ないかと思う。彼らが無罪になり心から喜んでいる様は
見ていて微笑ましいし、誰だって人の家族を
バラバラにしたいとは思わないので、
情に訴える弁論させられると辛い判決は出しにくい。
裁判というものの難しさもまた現れていたように思う。