1.《ネタバレ》 2014年の映画だが、実際は2011年4月にクランクインの予定のところ震災のため10月に延期され、さらにいろいろあって公開が延びたとのことである。場所は茨城県久慈郡大子町が中心のようで、バス停と食堂は水戸市、風俗街は土浦市桜町という所らしい。
物語としては、出来事の意味づけが緩いようで何が起こっていたのかよくわからなかったが、単純にいえば地球人類の存亡のかかった純愛ストーリーのようである。劇中の宇宙人と提灯屋は、最初に思いがけず一夜をともにした(一緒に歩いた)とはいえ結局最後まで性交渉がなかったようで、月並みないい方としては売春婦かつ聖女とのプラトニックラブということになるか。
愛を貫くか地球を救うのかの選択の結果として愛が敗北した形になっているが、実はそれほど大それた話でもなく提灯屋の単純な心変わりであって、要は平凡な人生を主体的に生きる覚悟が決まったということらしい。この男のほかに地球滅亡を前にした周囲の人間模様も描かれていたが、見える範囲でいえばおおむね融和とか和解の方向だったようである。無駄に訪れた危機だったわけではなく、劇中の宇宙人にはみな感謝すべきということになるだろうが、その宇宙人の方は単純に元に戻ったようでいてそうでもなかったと思われる。
この宇宙人が宇宙人と自称していたのは一般人の世界から自分を切り離していたという意味であり、出身惑星が自分と同じ名前というのも広い宇宙というより自分だけの世界に住んでいたからと取れる。これまで仕事だけが外界との接点だったところ、提灯屋との交流でやっと地球人類の一員になれた気がしていたが、そのことでかえって最後は人としての悲しみと寂しさを知ってしまったという感じの結末かと思った。
ほか映像と音楽の印象はよかった。エンディングの主題歌も心に染みて切ない思いが残る映画になっている。
宇宙人役の佐津川愛美という人は相手役の男と比べると小柄で(152cmとのこと)、相手を見上げた顔がキュートな風俗嬢になっている。また同級生役の入来茉里さんはいつもながらかわいい人で(「お兄ちゃん!」が好きだ)、この人が泣くとキュンとさせられる。劇中人物としての役回りは実はよくわからなかったが、とりあえずこんな義侠心のかけらもない男はやめておけと言いたくなった。ほか提灯屋の母親(演・星野光代)が変にかわいく見えていたことの意味も残念ながらよくわからなかった。