1.《ネタバレ》 台湾が舞台の自転車ロードムービーである。観光案内のようでもあるが、自分としては台湾に行ったことがないので別に悪い印象はなく、かえってストリートビューで少し現地の様子を見てみるかという気にもなる。ストーリーとしては人生の先行きに迷っていた3人が、この旅をきっかけにして新しい道を歩き出すということらしく、題名の「南風」は意味不明だが、例えば変化の予兆となる風というような意味づけだったのかも知れない。
面白かったのは日本人のおねえさんと台湾人少女のやり取りで、罵詈雑言の応酬などがかなり可笑しく、これだけでも楽しく見られる映画になっている。始終けんかしているようなのは遠慮のいらない関係ができているからで、要は本当の姉妹のようだということだろう。また日台関係に関しては、「龍騰断橋」のところで台湾人少女があからさまな親日感情を表明する一方、クールな台湾人青年の方は「家族みたいな関係」としながらも「時に嫌気がさす」と言っていた。これを日本人としてどのように捉えればいいのかわからないが、とりあえず(根拠はないが)台湾をやたらに世界の親日代表のように決めつけない方がいいのではと思ったりもした。あるいはこの映画全体として一つのあり方を示していたのかも知れない。
ところで騙されてはならない点として、台湾人少女役のテレサ・チーという女優は「維基百科,自由的百科全書」によるとアメリカ人とのハーフであり、こういう顔つきが現地では普通というわけではないと思われる。また生まれが1989/6/1のため劇中設定の1997/2/24より8歳も上で、黒川芽以(1987/5/13生まれ)とは2歳しか違わないのだった。これで16歳という設定がまかり通るのはどういうことかわからない。
個人的感覚としては、いかにオバサン扱いされようとも黒川芽以の方が和風でかわいく見えると言いたいところだが、なぜか途中から本当にオバサンっぽくなってもう黒川芽以だか何だかわからない顔になってしまうので困る。それでもオバサンのような女の子のような風情ではしゃいでいる姿は微笑ましい。
なお完全に余談だが、映画のポスター写真に使われた風力発電のある場所が気になったので調べると、苗栗県通霄鎮にある「石蓮園」という鉄道車両を利用した宿泊施設兼レストランだったが、ネット上には日本語の情報が極めて少ない。日本人にとっては超穴場的な場所ということになるだろうが、他人にお勧めできるところかどうかは不明である(YouTubeに現地語の動画が上がっている)。