1.《ネタバレ》 水野久美さんがヒロイン役?の映画が上映されるというので見たが、FINAL WARSなどよりよほどいい出演作だった。この人を主人公が彼女扱い(今カノ)していたのは相手が誰でも同じではなく、やはりそもそもが美形の人だからこそそういう発想が出て来るのだと思われる。劇中では施設利用者の若い頃の写真を並べてその人の人生を思う場面があったが、水野さんの昔の写真を出せば皆さん恐れ入るのではないか。舞台挨拶の写真で見る限り、背筋も伸びてお元気そうで他人事ながら嬉しくなる。今後一層のご活躍を期待申し上げたい。
ところで自分としてはこの方面の仕事に関わったことがなく、この映画が実態をどの程度反映しているのかはわからないが、結果として現職の介護職員にエールを送り、またこの道を目指す若者を励まそうとする映画には見える。虐待はないのか、という友人からの問いを主人公が軽く受け流したのは若者らしい反応とも見えたが、あるいは他はどうでも自分は違う、というプライドを込めた対応とも取れる。
また自分には要介護の身内がおらず、こういう施設が理想なのかもわからないが、家庭的な対応の施設を見せることで家族に訴えかける部分もあったようである。ヒロイン?の息子のエピソードはかなり作為的に感じたが、この映画としてはぜひとも必要な登場人物だったのだろうし、終盤に至ればその息子も認知症との向き合い方を体得したということらしい。目の前にいるのが誰だかわからないだけで、人そのものの存在を忘れてしまったわけではないということである。
ほか全ての人にそれぞれの人生があり、最後まで人間として生きているのだといったことは、人間への敬意を忘れるなという意味で、介護の分野にとどまらない一般向けのメッセージにもなっているように思われる。
個別の場面では、個人的には序盤でオレンジの皮をむく場面に和まされたが、人物の動きを止めて観客の意識を集中させる場面も複数あり、軽薄に見えた登場人物の発言が重たく響くところもある。最後に用意されていた落ちも少々わざとらしいが悪くなく、この人らしいきれいな字で書いてあったのが泣けた。どうせ関係者が内輪で盛り上がるだけの映画だろうと思っていたらそういうことでもなく、役者のおかげもあって広く人々に訴える力のある映画になっている。自分としては水野久美さんに引かれて見た形だが、主演俳優の今後にも期待したい。