1.《ネタバレ》 極限状態で利益が絡めば人間の本性はすぐ露わになる。
韓国で多くの犠牲者を出した聖水大橋崩壊事故(1994)と三豊百貨店崩壊事故(1995)をモチーフに、
損壊した若い女性の遺体を巡って、娘の両親を名乗る男女、霊安室の職員、役人、ジャーナリストの揉め事を、
不謹慎なブラックジョークで描いたパク・チャヌクの初期の短編作品。
当時の不安に満ちた世相に実際のニュース映像を挟みながら、
金のためなら人間の良心すら捨てることも厭わない醜悪な社会への怒りと皮肉が込められている。
同時に後の長編作品にも通じるカメラワークとダークなユーモアもこの時から光っていて、
棺に安置した首無し死体と一緒に冷えた缶ビールに、
自分に似ていることを証明するために男二人が遺体に顔を並べているショットはなかなか強烈だ。
だらしのない職員に、賠償金目当ての男女、事なかれ主義の役人、
状況をひたすら煽るジャーナリストの傍らには沈黙する遺体。
そんな彼らの前に一人のケバケバしい格好の娘が現われる。
この娘こそ賠償金目当ての夫婦の実子だった。
そこから場が混沌としていき、タイトルにもなっている『審判』を下すための強い地震が起きる。
洗面器の水漏れにスタンドライトが落ちたことで遺体を守ろうとした職員を除いて全員が感電する。
遺体の親はいったい誰だったのか……もうお分かりだろう。
このラストに人間というモノが集約されている気がした。
人間こんなものと思いながらも微かに残された良心に、
パク・チャヌクならではの冷笑と人間そう悪くないという達観した感情が残る。