1.《ネタバレ》 南米ウルグアイ(とアルゼンチン)のホラー映画である。ネコや子どもを残酷な目に遭わせる映画が許せない人は見ない方がいい。
序盤からネコの取扱いがひどいので、これでは一体何をやり出すかわかったものでないと思わされるが、さすがに主人公の娘(8歳)にまでは危害が及ばないだろうと思っているとそのうち安心していられなくなる。エンドロールでは「撮影中に動物を虐待しませんでした」が見当たらなかったのでそもそも気にしていないようでもある。
監督はウルグアイ人で、長編デビュー作「SHOT/ショット」(2010)が評価されて「サイレント・ハウス」(2011米仏)としてリメイクされた実績がある。今回はゾンビホラーとしてのスリリングな展開を目指した形かも知れない。
場所はウルグアイの首都モンテビデオだが、最初と最後に屋外風景が映る以外はほとんど屋内で展開する。舞台になっているのは廃業した大型の屋内総合運動施設(実在したスポーツクラブClub Neptuno、2019営業停止)で、主人公は建物の夜間警備員らしい。施設内の設備やバックヤードを使って場面の変化を出していて、また警備業務ということで監視カメラ映像も活用していた。
ジャンルとしてはゾンビホラーだろうが、実際はゾンビではなく感染した人間である(題名からしてウイルス感染)。人間その他生物への加害直後に32秒間活動停止するのが特徴だが、それほど斬新でもなく単に話を作るための制約というだけに見える。登場人物がこの特性を利用した場面は3か所あり、それぞれ違う目的で使っていた。
個人的にはそれほど面白いとも思わなかったが、一定の娯楽性のある映画ではあった。
個別の点として、まず冒頭からタイトルまでが切れ目なくつながってワンショットに見えるのが目を引く。視点が1階→屋外→2階→屋外と移動していくが、さらに空撮にまでスムーズに移行したのは意外感があった。さすがにどこかで適当に繋いでいるのだろうが、これは上記「SHOT/ショット」以来の監督の個性と思われる。
またエンディングでは「亡き父の思い出に捧ぐ」と書いてあり、こんなホラー映画で故人に喜んでもらえるのかと思ったが、監督としては映画に出る父親(2人のうち主にヒゲオヤジの方?)に実父の人間像を反映させていたのかも知れない(釣りが好きでない、学習したことに忠実など)。やるべきことは断行するができないことはできない、というのも人間性の表現のようだった。