1.《ネタバレ》 芸術家を目指し、都会で長い下積み生活を送る若い女性シグマ。だが思うような結果が残せず、いまだカフェでバイトしながらただぼんやりと毎日をやり過ごしていた。周りを見れば友達誰もがみんな楽しそうで、SNSでは充実した毎日を送る人がそんな自分を見せびらかしている。同棲している同じく芸術家である彼氏も、近々個展を開くことが決定している。自分だけ、どうしてこんなにも上手くいかないんだろう――。そんな思いに捉われた彼女はある日ネットで、副作用から皮膚に強い疾患が起こるという違法薬物を目にするのだった。原因不明の皮膚病を発症したもののそれでも困難に負けず活動する若手アーティスト。そんな自分をSNSで発信すれば、自分はもっと注目を集めるかもしれない。そう直感したシグマは、誰にも内緒でその違法薬物を手に入れ、密かに服用し始めるのだった……。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、いやはや、なんとも人をイヤ~~~な気持ちにさせる映画でしたね、これ。映像はすごくキレイで洗練されていてクラシカルな音楽も品が良くて随所にセンスを感じさせるのに、語られるエピソードはどれも不快感マックスなものばかり。そのギャップが人をなんとも言えない気持ちにさせる。なんなんですか、この感じ(笑)。色んなとこからモノを盗んできてそれを勝手に作品にして芸術だと言い張る彼氏も意味不明だし、犬に噛まれた人を助けた時の返り血を浴びたままバスに乗って帰る主人公も訳わかんない。この監督、そうやって人を不快にさせながらも何故か人を惹き付ける絶妙なラインの画作り、お話作りがすごく上手い。人から注目集めるためだけに顔中できものだらけになった主人公が嬉々としてネットに画像をアップしまくり、後で反応を確かめてうっとりするとかなんともシュール。彼女と専属契約する障碍者専門のモデル事務所の社長が、あえて雇った目の見えない秘書をこき使うシーンなんて、そーゆーことに最近やたらうるさいポリコレ信者を爽快にぶっ飛ばしてます(笑)。んで後半、いよいよ顔面が崩壊し、もはや周りがドン引きしてるのにそれでもまだ認めてもらいたいと嘘を重ねる主人公。アホやなと思いながらも、どこかちょっと気持ちが分かるように描いてるのも良いセンスしてる。そんな中、主人公が夢見る理想の自分をときどき妄想で描くのも、このイヤ~~な感じをますます増幅してますね。この監督、性格悪すぎ!!でも、このイヤ~なお話と映像・音楽のキレイさとのギャップがなんだかクセになって、最後はもはや心地良くなってる自分がいました。監督はこの後、同じく胸糞映画界の俊英アリ・アスターに見出され、ニコラス・ケイジ主演でハリウッドデビューを果たしたとのこと。今度はどこまで嫌な気持ちにさせてくれるやら。胸糞映画界の新たなる才能の出現を素直に喜びたいと思います。