1.《ネタバレ》 ジリジリと照り付ける真夏の太陽。汗が止まらない。突然聞かされる思いもしない身内の不始末。何とかしようにも経済的に豊かなわけではない。主人公に襲い掛かる外面と内面の両面からのストレス。
そんな彼女の眼前に恰も絶好の契機の如く現れる茶封筒。ATMで見かけた男と同一人物だと彼女が確信していたかどうかは分かりませんが、茶封筒には現金が納まっているように彼女には思えた。男は死んだように眠っている。悪魔の囁き。訪れる出来心。
しかし、後悔の念と後ろめたさは実態となって彼女に襲い掛かる。否、妄想かも知れない。実態は謎めいた外国人のみか?
混乱する脳内を鎮めるべく彼女が選んだ手段は封筒の開封。そして目にするまさかの悲報と顛末。ところが彼女にとってそこには絶望は存在せず、まるで吹っ切れたかのように取り戻される日常の平安。
彼女の心に宿る良い彼女と悪い彼女のうち、午後三時に悪い彼女が訪れたのでしょうか?否、悪魔というぐらいだから彼女の心に外部から入り込んだのかも。腕にくっきりと痣を残しながら。普通に暮らしていたひとりの女性の心の隙間を現した心理劇と受け止めました。
個人的にはまずまず好みの短編ですが、何か締めくくりがしっくりと来ないこともあって5点献上です。