1.《ネタバレ》 石垣島を舞台にした映画である。同じ監督が撮った「サンゴレンジャー」(2013)に続く石垣島映画第2弾とのことで、この映画にも出ていた架橋計画(石垣島~竹富島、架空)はその映画の要素を持ち込んだらしい。
石垣島の風景や事物も大きく扱われているが、場所のイメージに反して陽性の映画では全くないので予想が覆される。現実問題として南の島(南ぬ島)ではいいことばかりということも当然ないわけで、そういう一般常識に基づいた南の島映画の試みとはいえる。
物語は東京(と埼玉)の場面から始まるが、どうせ島では自然と人に癒されるのだろうし、暴力の場面など見たくないのでさっさと石垣島へ行けと最初は思っていた。
しかし意外だったのは、主人公が着いていきなり犯罪被害に遭い、その後に友好的な人々に助けられてからも、なかなか不安感が解消されずに話が進むことだった。ちなみに実在のタクシー会社(協賛もしている)を犯罪がらみの扱いにして大丈夫だったのか。
またさらに意外だったのは、ジャンルにも「サスペンス」とあるがミステリー調の作りになっていたことで、後半では暴行事件や殺人事件まで起き、最後は犯人を前にして真相を暴くのが探偵物のようだった。なお途中で登場人物がいきなり豹変したように見えたのは、安手のヒトコワ系ホラー的な都合良さもあったりしたがまあ許容範囲か。
主人公はこれで南の島への期待が砕かれて、さらに身内も失ったことでいよいよ決意を固めたらしい。当初からのマイナス要因も切り捨ててゼロになり、ここでやっと題名の希望をかなえるためのスタート地点に来たという結末だった。これから長距離走になると思われる。
結果として "南の島なら何とかなる" ではなく "自分が何とかしなければ" という映画だったようで、主人公の悲壮な決意に心打たれるラストだった。
出演者について、主演の馬場ふみかという人はほとんど笑顔も見せず、ずっと(果物ナイフ以外)頼りない表情で、かろうじて終盤に少し締まった顔になるが、こういう役柄にこの人の風貌は結構向いているかと思った。驚いて目を丸くする顔も特徴的かも知れない。また中村静香さんは救いの天使かと思ったが、当然ながらかわいいばかりでなくそれなりに黒い人物像を見せている。
その他目についたのは喫煙に関することで、今どき露天の喫煙所でコミュニケーションを取って「一本貸し」などという場面は懐かしさを感じる。中村静香さんがひっきりなしに煙草を吸う役というのも面白かった。