1.《ネタバレ》 福地桃子という人の初主演映画とのことで見た。いい表情を見せている場面が多く、太鼓の叩き方もかなり様になっている。
屋久島が舞台なので現地の風景がいろいろ出るが、個人的には石置き屋根が珍しかった(うちの地元にも昔は多かった)。ペンション「マリンブルー屋久島」の沖に見えたのは隣の口永良部島と思われる。船の行き帰りに映していたのは薩摩の開聞岳か。
また隣の種子島も話題に出して、屋久島は丸い/自然の島/主人公/生命を守る医師、種子島は細長い/技術の島/相手の男/工学オヤジという対応関係を作っている。「技術の島」というのが種子島宇宙センターかと思ったら鉄砲伝来だったのは意外だった。
ほかロボットはなかなかよくできていると思ったら、分身ロボット・OriHimeとして既に製品化されているとのことで、そのプロモーション的な意味のある映画だったらしい。ロボットがAIでないのに母親がAI研究者という設定なのは変だが、これは母親との関係でAIと思い込んだからこそ主人公も心を許せたと解される。
物語としては、定型的な人物設定とか都合よすぎる展開はあるが個別に心打たれる箇所もある。主人公がロボットを飛ばしたいと言ったところでは、なるほどそれはいいことだと単純に嬉しくなった。また相手の男が「自分だからこそできることがある」と言ったのは、そうだそうだと思って少し感動した。なお親友が捨て石のように終わったのは残念だった。
マイナス面は結構あるが、福地桃子さんの存在感と心優しい登場人物のおかげで全体の印象は悪くなかった。
ところで最大の疑問点は、映画の構成要素である①太鼓、②分身ロボット、③屋久島、④天の川(織姫・彦星)が、どういう必然性をもって一つの映画に入っているのかわからないことである。これに関してクラウドファンディングの目論見書を見ると、構想に至る経緯により当初から②と③④がセットになっていたようで、①はその後に追加した要素らしい。
また劇中で各種さまざまな思いが語られるのも雑多な印象だが、その中で個人的には特に、孤立せずに他者とのつながりを作るのが大事と言いたいのかと思った。一方で目論見書では「新しい世界に踏み出」せというメッセージを伝えたかったとのことで、どちらも主に上記②関係のようだが、完成した映画では①にも関わるようにして辻褄を合わせていた。これで全体構造が何となくわかった気はする。
その他雑談として、浜辺で天の川を眺める場面では「夏の大三角形」が映っていたが、この映画としてはヴェガとアルタイルが重要なはずなのに画面の下の方に寄っていたのは変だ。一方で上に見えるデネブには言及がなかったが、深読みすれば上の方から2人を(主人公寄りで)見守っている人物がいたということで、個人的には水野久美さんの演じる祖母がこれに当たると思っておく。