1.《ネタバレ》 まずは唯々、一皮剥けばそれしか頭に無い…という様な・というダケの映画、であると思われてしまうのが否めない。何故か、どれもワザとらしく耳元で囁かれる様なまだるっこしい台詞の一つ一つとて、或いは、逆に空虚な程にエレガントを極めた高級ホテルのアレやコレやに至るまで、要は全てが「前戯」=その先に来る「本番」無しには到底成立しないモノでしかない、と思われてしまうのだ。勿論それは、如何にも現代風なキャリアウーマン然とした今作のエマニュエル=ノエミ・メルランを以てしても、そういった代物が実際に確かに、見映え程に大層なる価値など持たない人生の「虚飾」でしかないコトの証左(たる表現)なのかも知れない。しかし、であるのならばこの映画は一体、最後にドコに=どういう類のその本番(・絶頂 ・解放)に辿り着いて終わった積りになっているのだろうか、というコトだ。自分には無いモノ・自分とは違うナニか、に対するある種の無意識な「勘」に従って、主人公はあの奇妙な男の懐に遂に飛び込んだ…とそれはそれでも好かろう。が、端的にどうにも、その結果としてのクライマックスにさえも、我々&肝心な彼女でさえ、が期待した様なドラスティックで鮮烈なナニか、というのが一切描かれていなかったという様にしか見えて来ず……重ねて、これだけの空虚さで以てこれだけ我々を焦らしに焦らして、なのに最後にまたこんな空虚を一杯に喰わせてそのまま終わる…という、コリャあ中々にムゴい映画だな~と思ってしまいましたよね。原作や先行作を観ずとも、これは決して出来の好い映画化ではない…とは確信できる程度の作品かなと。
それでも一つダケ、肝心な=私が今作を観たトコロの最大の理由たる、主演のメルラン女史の出来自体は、好いか悪いかで言えば前者だったかとは思うのですね。件のキャリアウーマン=また内外に「パワー」の漲る様子のキマリ具合とかだって率直に中々のモノだったと思いますし、一方で、劇中終始あんまし表情が大きくは変わらない・崩れない、のは、それはやはり(前述のキャラの通りに)確固たる「自信」を常に抱いているコトの様にもチャンと見える…一方で、同時にまた常に「満たされて居ない」コトを示している様にも見える…それはそれで、作品に対して実に適切に「艶めかしい」コトである様にも見えたりもして、結論的には全体としても、彼女についてはハマり役はハマり役だったのではねーか…とは十分に思えるのですよね。でも、寧ろだからこそ他方で一つ例えば、ラス前に今のこの仕事を結局辞めるコトになったトコロで、じゃあそれが彼女の人生に(望むべく)ドラスティックな意味を持つだろう…とは中々見えて来ないのも再び確からしくも思えますし、もう一つやはり、確実に敢えて「取り繕った」表情を一貫している…というのが重ね重ね、オーラスでもイマイチ「ハッチャケられなかった」という結末にも無理なく繋がってってしまってる様にも思えてしまうのでして……何と言うか総じて、完成度は何処も彼処も低くない(=コンセプトに則って纏まっては居る)のだケド、そもそもコンセプト自体(=彼女をこんな感じで起用したコトも含め)が非常に根っこの部分でちょっとイケてなかった…という様な、実に残念なレイヤーにおける残念な感じが在って至極残念…みたいなコトなのかも知れませんかね。