1.《ネタバレ》 テニスプレイヤーの親友の二人が将来有望な一人の女性テニスプレイヤーを愛し合う。
まるで実話みたいな内容だが、本作は完全なフィクションである。
(かつて選手だったフェデラーの妻のしかめっ面から着想を得たらしい)。
親友同士だった二人の試合と10数年にも渡る愛憎に満ちた三角関係の行方を、
ラリーのように現在・過去・現在・過去という具合に時間軸を交錯させていく。
三角関係だったらどこにでもある題材だが、男二人のキスシーンに驚いた。
その二人を止めることなく、笑顔になるヒロインのタシ。
監督がかつて同性愛映画を撮っていたルカ・グァダニーノだから、普通のテニス映画にならないわけだ。
現在で描かれる試合に向けて、テニスでしか生きる意味を見出せない三人がそれぞれ切望しているもの。
試合前日に罵り、不安を煽り、心理面で揺さぶりをかける。
タシは本当に二人を愛していたのだろうか?
選手生命を絶たれ、それでもコーチとして表舞台で注目を浴び続けたい理由付けのためにアートを利用したのか?
アートは自分をコントロール下に置くタシに愛想が尽きたのか?
パトリックは本当はアートと復縁したいのか?
それぞれの思惑が意見の分かれる曖昧なラストに結実していく。
その後の物語は一切描かれていないが、タシの"Come On!"(やった!)を見るに、
あの一瞬の理想のために三人は手に入れたいものを手に入れたのだろう。
テニス映画として見ると、コミュニケーションツールとしての役割でしかなく、別にテニスで描く必要はない、
デヴィッド・フィンチャー映画でお馴染みのT・レズナーとA・ロスのコンビによる
スコアの完成度が高かっただけに拍子抜けした。