1.《ネタバレ》 題名は意味不明である。現代社会の構築と維持に不可欠な電力を、鋼なみの剛性イメージで捉えたのかも知れないが何ともいえない。物語としては電力による縛りがなくなった空間で、人々が本音や本当の顔を晒した話のようだった。
主な登場人物は同期の若手社員3人で、また会話に出ていた部長もあとで顔を出す。
若手のうちで個人的に好感が持たれたのは「いのうえ」という人物だった。低めの声が飾り気のなさを感じさせ、また若干変人っぽいのを隠さないのが正直で謙虚にも思われる。当日の面会予定は結果的にどうでもよかったようで、それよりたまたま起きた何でもない出来事の方が思いがけない贈り物だったらしい。部長も声をかけてくれていた。
またその部長は笑ったのを初めて見たと言われていたが、それは言った本人が見たことがなかっただけで、そもそも本来がこういう人物だったとしか思われない。悪口といってもそれほど根本的な人格否定のようでもなく(理不尽な中傷で笑ってしまう)、かえって本人は若い連中と接点ができて嬉しかったのではないか。今回の更新で人間関係もアップグレードされたようだった。
なお最後のアラームも意味不明だが、当日中にインストールが完了し、翌日は更新後の再起動というイメージかと思っておく。大感動でもないが少し気分がよくなる短編だった。
[雑記] 最後に「すずらん通り」の話題が出ていたが、それより個人的には大昔に「ぴあmap」か何かを見ていたところ、東京にも××銀座というのが多数あることがわかり、そういうのは田舎だけにあるものと思い込んでいたので意外だった。ただその××銀座も戸越銀座(品川区)が元祖だそうで、さらにその戸越銀座に砂町銀座(江東区)、十条銀座(北区)を加えて東京の「三大銀座」という呼び方もあり、本家の銀座を頂点にしたピラミッド構造ができているかのようである。数としては「すずらん通り」より××銀座の方が多いだろうが、もしかするとそんなことは東京の住人には常識なので、あえて「すずらん通り」の方を出したということか。地方民には計り知れないところがある。