7.《ネタバレ》 「朗かに歩め」に続く小津の暗黒街もの。完成度は「非常線の女」なのかも知れないが、俺はこの作品の方が好きだ。
オスカー・シゴールの「九時から九時まで」が原作と、この頃の小津はアメリカナナイズドされすぎ(良い意味で)。
溝口健二の「瀧の白糸」で岡田時彦のファンになって以来、岡田時彦が主演と聞いてこの作品も見た。
「朗かに歩め」や後の「非常線の女」でもそうだが、小津の同じパターンを繰り返すストーリー展開はこの頃から完成しつつあったようだ。
しかし上記二つの作品とは一味違う。
小津作品してはガンガン印象付けようとするカットが多い。
最初こそ強引に見せつけようという感じがするが、劇中で徐々に自然でさりげないカットになっていく。
洗練されていない荒っぽさが逆に良い。
手袋から別の手袋に繋がるカット、居並ぶ警官隊の雰囲気、伏線だった冒頭の「強盗」・・・銃を何処から入手したのかは解らないが、当時の恐慌で金も無くなり「アレ」を救うため仕方なく強盗に興じる・・・。
自首しようとする夫、夫を逃そうとする女。
後年の「非常線の女」とは逆というのも面白い。
「もう逃げない」と覚悟を決める男、警官とのツーショットが一番印象的かも。
八雲恵美子の着物姿も艶かしい。
地味に常連な斎藤達雄の医者も面白い。
笠智衆もこの頃は端役ながら活躍。
この後小津は「エロ神の怨霊」という言うまでも無く黒歴史を撮った。脚本すら無いのだから相当「やらかした」作品に違いない。この頃の小津はやんちゃすぎる。