3.なんともいえない余韻を残す、ユスターシュの美しき遺作。
あまり観ている人は多くないであろうユスターシュの作品。
フランス映画っぽいけど、他のフランス映画とはどこかが違う。
何が違うのかよく分からないけど、何故か観ていて飽きない。
フランス映画って、雰囲気は良くても、観ていて飽きてしまう作品が少なくない。
その中にあって、ユスターシュ作品は観ていても時間を感じさせないのだ。
でも、その理由は全く分からない。
摩訶不思議だ。
この不可思議さが、この監督の最大の謎であり魅力でもある。
さて、本作はそのオープニングからして心を奪われた。
淡いピンク色の文字に、背景にはフランスの美しい村の映像。
そしてバックに流れるシャンソンな歌。
映像に関しては、ヴィスコンティ作品の様な豪奢感のあるTechnicolorでもないし、現代のDVD映像の様なシャープさがあるわけでもない。
だけど、それらにも劣らない美しさが本作にはある。
全く飾り気ないのに、それでいて美しいのだ。
センスがいい人が、ストレートに画を撮るとこうなるのかな。
とにかく観ていて心地のいい映像の数々。
そして、出演者がみな美しい。
男女に限らずだ。
来ている服もさり気なく美しいし、センスも抜群。
ココ・シャネルがどうのとか、モードファッションがどうのとか、そういう類いの“衣装”の美しさでは決してない。
あくまで出演者の着ている“服”が、自然でいてセンスがよく、ユスターシュが描く本作の世界観にマッチしているのだ。
特筆すべきは、主演の幼い男女二人。
とても画になる二人。
こういうのを観てると、自分が日本人に生まれたのを恨めしく思うね。
思春期特有、特に男子に特有の「歯がゆさ」というか「やりきれなさ」みたいなものがうまく表現されている。
それは痛々しいほど繊細に描かれていて、観ているこっちも辛くなるほどだ。
これはユスターシュの自伝的作品であるとも言われており、彼の思春期の頃の想いを垣間見ることができる。
若くして自殺したユスターシュ。
あぁ、もっと彼の作品が観たかった。