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<ネタバレ>この作品の「静かさ」が好きです。音楽やカメラワークでけたたましく感動させようとする手法とは対照的な、とてもナチュラルで繊細で、そして優しいタッチで描く。これぞラッセ・ハルストレムだなと思わせる作風です。序盤の二人の出会いから、もうすでになんとも言えない初々しさがあって共感。そして彼氏が軍隊へと派遣されて二人で文通を始める、その手紙の文章がこれまたぐっとくる。これぞ純愛。素敵な愛。手紙が待ち遠しく思う気持ち、来ないと不安になる気持ち、でも来るのがわかってるっていう気持ち、凄く良くわかる。自閉症のお父さんはコイン集めが趣味だけど、僕もコイン集めしていたことがあるから、その気持ちもよくわかる(笑)。お父さんと、コインという共通の趣味で会話があったのに、反抗期になって会話がなくなっちゃう。そのことを、自分が死にかけた時に思い出し、お父さんが弱ってる時に吐露するシーンは感動的。この「恋愛」での純粋な気持ちと、「親子」のある種の後悔の気持ちっていうのは、多かれ少なかれ誰でも共感するものがあるんじゃないかな。自分はそうだったから、すごく胸にくるものがありました。ただ、物語は後半になると途端に悲しい展開になっていきます。彼女は突然手紙で別れを告げ、自分は銃撃を受けて死にかけ、お父さんは他界してしまう。硬派な主人公があまりに不憫です。彼を捨てた彼女酷いよ~って思うけど、でも1年間会えなくて、久々に会ったらさらに2年延長って言われるんだから、寂しすぎる気持ちも仕方ないかも。主人公は自分のことをコインに例える下りがありましたが、父子が大切にした思い出のエラーコインがある意味象徴的であります。人は皆、完璧なコインを求めますが、むしろエラーコインの人生のほうが、より思い出深く中身の濃いものになるのでしょう。恋愛と親子愛は、酸いも甘いもあるからこそ特別な絆が出来るんだと思います。