結果だけ見れば悲惨といっていいはずの若者の晩年を描いていなが .. >(続きを読む)
結果だけ見れば悲惨といっていいはずの若者の晩年を描いていながら、不思議なほど主人公の内的葛藤や戦場の恐怖に戦慄するシーンが少ない。
浅野演じる泰造は、一時帰国した折、家族の前で、実にあっけらかんと血生臭い戦場の様子を語る。
そんな筈がない、という人もいるだろう。実際の一ノ瀬氏はどうだったのかわからない。しかし私的には、この主人公の様にとてもリアリティーを感じた。
もしかすると一ノ瀬は戦場に身を置いてはいても「命を賭して」などというつもりは全くなかったのではなかったか。
功名心、憧憬、無自覚かもわからないが使命感などの、色々な思いが混沌としている中、押さえられない情熱に従っただけだったのではないか、などということを思いながら観た。
うそ臭いヒロイズムに流されず、浅野忠信は、実にうまく演じていて素晴らしい。
私が見た、一ノ瀬氏の写真の印象に違わない、優しさのあるいい映画だった。