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冬風が吹きつける日本の寂れた裏通りを歩いていく冴えない男二人。
“顔見知り”程度の二人の絶妙な関係性が、妙な間と可笑しみを生んでいく。
そこには希望もなければ、絶望もない。“美しくないもの”をきっちり美しくなく描き出す辛辣さと、可笑しさ、それらに裏打ちされたリアリズム。
山下敦弘監督(「リンダ リンダ リンダ」)のこの映画をずうっと観たいと思っていたけれど、地元のレンタル店ではなかなか見つけることが出来ずにいた。
最近になって特に観たくなっていた最大の理由は、尾野真千子が出演しているからだった。
ふと訪れた自宅から遠いレンタル店でようやく今作のパッケージを見つけ、やっと鑑賞に至った。
つげ義春の原作らしく、創造以上に“つかみきれない”感覚は、エンドクレジットが映し出された瞬間に覚えた。
良い映画とも悪い映画とも大別できない浮遊感みたいなものを、観終わってしばらく感じていた。
その浮遊感こそ、この映画が描こうとしたことだと思う。
人の世は、楽しいものなのか、美しいものなのか、素晴らしいものなのか。
大概の場合、その答えは「ノー」と言わざる得ないけれど、それでもふいに訪れるわずかな“光”の“ようなもの”を求めて、ふらふら、ふわふわと多くの人間は生きている。
人も、物も、風景も尽くうらびれているこの映画は、その突き詰められた“うらびれ感”の中で、「それでももうちょっと生きてみるのも悪くない」ということを呟くように伝えてくる。