登下校の何気ないひと時、遠い昔の記憶は、いつも奇跡のように思 .. >(続きを読む)
登下校の何気ないひと時、遠い昔の記憶は、いつも奇跡のように思い出される。
それは、全校生徒が数人しかいない田舎の小中学校に通っていなくても、誰しもが持つ経験だと思う。
この映画は、単純に田舎の純朴さや雰囲気の良さを描いているのではなくて、そういったすべての人が持ち得る「遠い記憶」の何にも代え難い「価値」を描いていると思った。
主人公の中学生たちは、決して人間として完成なんてされていない。当たり前だ、中学生なのだから。
そんな彼らが、まわりの人間や自分自身の言動によって、喜び、傷つく。
全編通して、それほど大きな事件が起こるわけではない。むしろ「何もない映画」と言えるかもしれない。
しかし、日々の生活の中のたった“一言”が、彼らに生活の中では大事件であり、心は大きく揺れ動く。
きっとそれは誰しもが経験し、成長とともに徐々に薄れていく感受性なのだろう。
でもそれは全く無くなってしまうわけではなくて、それぞれの人間の奥の方に、ずうっと残り続ける。
そんな感覚をそっと思い起こさせる映画だった。