「何が自由か、知っている」
このコピーを見た時、まだ作品を .. >(続きを読む)
「何が自由か、知っている」
このコピーを見た時、まだ作品を観ていないのに、なぜだか「なんてこの映画を捉えた巧いフレーズだろうか」と思った。
「かもめ食堂」の監督が描き出す新しい映画世界が、きっと「自由」というものの本質をさらっと表現しているのだろうということは、かなり容易に想像ができたからだ。
そしてそれは想像通りに、美しく、美味しそうな描写の中で、淡々と何気なく伝えられていた。
「自由」というものを得るために、必要なのは時間を過ごすためのトランクではなく、その本質を見ようとする「意識」だ。
何もしない時間を、楽しむということは、コツがいる。
個人としての自分を、本当の意味で自立させなければ、本当に自由な時間というもを過ごすことはできない。
そしてそれは、大きな勇気と、経験が要る。
おだやかな時間の描写の中で、この映画は、そういう人間として生きていく上での本質的な「強さ」とその意味を伝えてくる。
ストーリー性が無い分、「かごめ食堂」よりも一層に映画としての面白味は、ゆっくりとじわりじわりと染み込むように伝ってくる。
並ぶテーブル、古めかしいかき氷機、当たり前に広がる曇り空、そういう何の変哲もないワンカットごとに、「情感」が溢れるこの映画の価値は、紛れもなく本物だと思う。