<ネタバレ>冒頭、軽犯罪に手を染める主人公のギョロリとした両の目が暗闇の .. >(続きを読む)[良:2票]
<ネタバレ>冒頭、軽犯罪に手を染める主人公のギョロリとした両の目が暗闇の中に爛々と浮かぶ。
その目を見た瞬間に、「ああ、こいつはちょっとフツーじゃないな」と感じ取れ、同時にこの映画自体の特異性を予感せずにはいられなくなる。
食いっぱぐれ、社会の底辺に潜んでいた主人公が、“ナイトクローラー”と呼ばれる報道スクープ専門の映像パパラッチ業に辿り着くことから、このある種悪夢のような“サクセス・ストーリー”が転がり始める。
こんなにも胸クソ悪いサクセス・ストーリーを未だかつて見たことがない。
と、自分の中の表向きの倫理観は、この主人公の存在そのものを真っ向から否定する。
けれど、それと同時に、外道そのものである彼の成り上がりぶりに対して、一抹の高揚感を感じてしまっていることにふと気づき、とてもじゃないが胸中穏やかでいられなくなる。
果たして、この映画の中で本当に間違っていることは何で、本当に正しいことは何なのか。
この映画は、衝撃的でおぞましいストーリーテリングの中で、その正体が何なのかということを観客に問うてくる。
「勤勉で志も高く粘り強い人間です お役に立てると思います」
“ゲスの極み”である主人公は、終始一貫してそう言って自分自身を売り込む。
自分の成功のためなら、彼はあらゆる罪も犯罪も意に介さない。
しかし、彼のその言葉自体には、微塵の偽りもない。
彼は自分の立てた成功のためのプランに対して努力を惜しまず試行錯誤を繰り返し実現している。
それは、完璧なPDCAサイクルの実行であり、そのプロセスだけを捉えればあまりに有益なビジネスの手本と言えよう。
主人公は、時間を惜しんでインターネットを貪り、この現代社会において「正論」とされているありとあらゆる理と、資本主義のルールを体現しているいに過ぎない。
故に、この映画は、決して主人公を断罪せず、さも当たり前のように“ハッピーエンド”を与えているのだ。
おぞましくも独創的に社会の病理性を“爛々と”描き出したストーリーとキャラクター造形が見事だ。
ただこの映画を成功に導いた最大の要因は一にも二にも主演俳優によるところが大きい。
ジェイク・ギレンホールの言葉通りに「異様」な存在感こそが、この映画の肝であり、テーマそのものだったと思える。
劇中、殆ど瞬きをしない主人公ルイス・ブルームの異様な眼差しが、脳裏にくっきりと焼き付いて離れない。
ただし、“フツーじゃない”のはこの男ではなかった。決して曇らせることなく彼の目を輝かせ続けるこの社会の暗闇こそが、“フツーじゃない”のだ。[良:2票]