<ネタバレ>極めて「純粋」な映画だと思った。
人間の、ほとばしる欲望、 .. >(続きを読む)[良:1票]
<ネタバレ>極めて「純粋」な映画だと思った。
人間の、ほとばしる欲望、溢れ出る性欲、入り乱れる情愛と憎悪、そして変態的嗜好。
この映画に登場する人間たちは、只々純粋に、自らの抑えきれない衝動に駆り立てられ、ひたすらに埋没していく。
その様は、あまりに利己的で醜い。だがしかし、同時にとてつもなく淫靡な美しさに溢れかえっていることも否定できない。
それは、この映画を観ているすべての人間たちに共通する本質であり、拭い去れない人間そのものの「業」なのだろう。
蜘蛛の糸のように映画全編に張り巡らされた“インモラル”が、絡みつき、徐々に、確実に、映画世界の奥底に引きずり込まれる。
映し出される映画世界は極めて異質。パク・チャヌク監督の容赦のない演出と、禍々しくも美しいビジュアルは、背徳感に溢れクラクラさせられる。
彼の監督作を観たのは、2003年の「オールド・ボーイ」以来だったので、芳醇な韓国映画界の中でも屈指の映画作家である彼の他の作品を今一度しっかり観なければならないと思う。
一方で、サスペンスとしてのストーリーそのものは、案外オーソドックスだったとは思う。
二転三転はするけれど、それが想定外の展開だったかと言うとそんなことはなく、驚きはあまりない。
ストーリーテリング自体も、良い意味でも悪い意味でも「寓話的」であり、リアリティラインが低い分、描き出される物事の烈しさの割には、キリキリとするような緊迫感はそれ程感じなかった。
むしろ、ある程度狙いだったのだと思うが、烈しく過剰過ぎる演出は、時にユーモラスにも映り、それもまた独特だったと思える。
明確な難点としては、韓国人俳優たちが時々発する“日本語”の精度が低かったことだ。
決して聞き取れなくはないけれど、キャラクターの設定上ネイティブレベルの日本語力があって然るべきだったので、その聞き取り辛さは、日本人鑑賞者としてどうしても“雑音”となってしまった。
もう少し適切な日本語指導の下で丁寧なトレーニングをしていれば、きっと解消出来ていた筈なので、その部分に関しては少々残念だ。
また濡れ場シーンでの雑なボカシも大いに気になった。大昔のアダルトビデオじゃあるまいし、もう少し何とかならないものか。
確固たる「芸術作品」に対する国内の規制の価値観は、もうそろそろ見直されるべきだと思う。
下劣な男たちは地下で朽ち果て、純粋なる欲望を貫き通した彼女たちは、そのまま世界の果てに突き進む。
ありとあらゆる意味で、体の奥底が熱くなる映画であることは否定しようもない。[良:1票]