岩井俊二という人は、「映像作家ではあっても映画作家じゃない」 .. >(続きを読む)[良:1票]
岩井俊二という人は、「映像作家ではあっても映画作家じゃない」という理由から、事実上、映画ジャーナリズムの本流からは黙殺され続け、評価の対象にすらなりにくい作家です。実際この作品でも、“映像世界”を作ることには長けてるのに、“映画”として語るべきものを何ももってない。でも、そのことは承知の上で、その「うまさ」に最上級の点数をつけたくなってしまいます。8ないし9点つけてもいい。そのくらい、うまいです。映像、音楽、シークエンスの作り方、セリフ・・・、それらのイミテーションを巧みに重ねて、限りなく映画に近い表現を実現できてしまう。ヘタな映画なんかよりずっと巧い。だから、観ている最中はすごく満足できる。だけど、それにもかかわらず、この映像世界と現実世界との間にはまったく回路が開かれておらず、見終わったあとは、不気味なくらいに何も残らない。徹頭徹尾、円環的なメルヘン世界に自閉して終わる。いわば2時間強の、上質のコマーシャル・フィルムを見てるようです。[良:1票]