<ネタバレ>作品名の通り“バッシング”されまくる一人の女性を主軸に、その .. >(続きを読む)
<ネタバレ>作品名の通り“バッシング”されまくる一人の女性を主軸に、その女性が原因でその家族までもがバッシングの対象とされ、悲劇が起こるまでの顛末を描いた、極めてシリアスな家族人間ドラマ。
私の最も好きな「東京フィルメックス」でグランプリを受賞した作品。
この映画祭でグランプリを獲った作品には今のところハズレが無い。
殺伐とした浜辺を眼前にそびえ立つ古びた団地。
そして荒涼とした工業地帯。
地味で地道な仕事に勤しむ人々。
それらの舞台設定が抜群に良く、このシリアスな題材に感情移入できるだけの、良い意味での映像的な「負のパワー」に満ち溢れている。
主人公を演じる女性は、とても自分勝手で、コンビニでわがままをタメ口で言ったり、決して美人とは言えない容姿など、冒頭から嫌悪感を振りまいている。
これは序盤から中盤で、この主人公の女性に同情的な感情移入をさせまいとする、計算づくの演出だったに違いない。
その序盤の彼女への印象が、終盤では見事に覆っていく。
いわばコンプレックスを抱えながら、貧しい環境で育ってきた一人の女性が、閉塞的な荒涼とした町の中で、いかに自分の居場所を失っていったか。
それは想像に難くない。
そんな彼女が、海外ボランティアを通して、自分の存在価値たるものを感じたかったと考えるに達するのは至極当然な流れである。
何不自由なく育った人には、他人事にしか思えないだろう内容だが、どこそこかにコンプレックスや居場所の無い孤独感を経験したことのある人なら、本作を鑑賞して、共感をおぼえるに違いない。
さすが「東京フィルメックス」のグランプリ作品だけあって、心の深い部分をえぐられたような衝撃を感じた。
これからも「東京フィルメックス」には注目していきたいし、過去の受賞作もできる限り観ていきたいと思う次第である。